ルームメイト森田さん

「えーとですね、あのそれは....」

「ライフシェアです」

え。森田さん?ライフシェア?なんだか違うような。ルームシェアと言いたい?横文字弱い、縦文字もか。


「あ、そうです。ルームシェアです。」


「えー」「え」

そうなりますよね。はい、そりゃあね。


「そうなんだ。あ、もしかして森田さんってゲイ?」

「響さん!何という質問するんですかっ」

「はははっ確かに前から会社では噂だったよね〜河野部長代理に狙われてたし」

「ああ あの人はホンモノだからな」


はあ すっかりゲイトークになってしまった。どうする森田さん。私、さすがに森田さんにゲイまで演じてとは言えませんぞ。


「僕は......彼女も彼氏も居たことがありませんっ」


空気は変わったのでした。みんな触れてはいけないと思ったようで、ゲイとかいう以前の問題だと。


帰るという二人を私は見送りに下まで行きました。

吉田さんは逃げるように帰り、


「まこちゃん、ちょっと散歩しよ」


ん?いくらバカな私でもわかります。きっと響さんは......

こんな私を。


「あの森田さんてさ まこちゃんに何もしないんだな」

「はい?」

「いや、君みたいな子がさ毎晩いるわけでしょ」

「はあ」


一緒にねてますけど、ベッドもシェアですから。

それでも何もありません。私は雇われセラピスト。一応、大したことはしてませんが。


「なんで?家賃?」

「あぁ、まあそれもですけど。元々近所でしたし、仲良くなりましたし、ちょっと変な人にパンツ奪われそうになって助けてもらってから。心強いからといいますか。」

あぁなんでパンツの話までしてんのやら。


「パンツ?何それ下着泥棒か。」

「あ はい。そんなとこですね。」

「じゃ、うちに来ない?」

「はい?」

「俺んちに住め」


 いやいや、無茶いいますね。響さんは病んでませんし。

なに?冗談じゃない?真面目腐って答え待たないでください。


「何言ってるんですか。冗談が過ぎますよっ。響さんは上司で、わた」

「俺が守ってやる」


あらこの人は、補正しなくとも元から私のキュンワードを出す。


「そんな。大丈夫です。私今は今のままで.....」

「ふうん せっかく恥ずかしい事言ったのにな。来たかったらいつでも来いよ〜まっ俺んちきたら何もしない訳にはいかないけど。」


響さんは、森田さんを男としてみなかった。

同性から男に見られないって、どうよ。




「あ、森田さん ほんとにすいませんでした。グイグイで。吉田さん」

「あ ぁ いえ。僕は平気です。真琴さん大丈夫でした?あの、上司の方に誤解はされてないですか」

「ん 誤解?......そんな何もないから誤解もなにも 無いです」

「そうですか.....」

「あ あの、真琴さん」

「はい」

「え、あっと、猫ってなんですか?たかし」

「あ......森田さんです」

「猫、見つかったかと.....吉田さんが....え?」

「え?」


もぅ。なんで猫のくだりだけそんな食いつくのか。

言ってやるよドサクサで。


「もう!森田さん分かってますよね。私が心配してたの。森田さんが居なくなっちゃうって。マーライオンのチョコと帰ってきた時です。」


「あっはい。じゃ猫は戻りましたね。きっとずっと居ますよ」


『俺はずっとお前といるよ』


あー。もうそろそろやばいわ。やばいですっ。私の妄想補正が。ここまで来ました。


ピッピッ

「411」


「えーっ も 森田さん」

「あれ 酷いですね。」


私は森田さんに抱きついた。最近下がっていたのにどんっと上がった不安数値を下げるため。

嘘です。きっと私が森田さんに触れたかっただけ。


さっきの二人の襲撃が余程のストレスとなったのだろうか。極秘任務とやらより、あの二人がストレス?どうも不思議です。



「はい。真琴さんどうぞ」

いつものように左腕を出す森田さん。


「あ、真琴さん。枕買いましょうか」

え?今更もうかなりの回数こうしてきましたけど。


「あぁ 枕。腕痛いですよね」

「いえ。僕の枕でいいなら、いいです」


私は今幸せを感じている。おかしいとは分かっている。彼氏でもない人と毎日暮らし、食事をし、添い寝する。腕枕で。一日に数回は抱きしめ合い....。これは、親に怒られても仕方ないレベルである。

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