押しかけ上司

 しばらく森田さんの数値は上がったり下がったり120あたりをウロウロしていた。


そんなある日事件は起こった。


ピンポーン


モニターを見た森田さんが私を見る。挙動不審で、なに?どうしたんだっ。何事?!

不審者?なんかの勧誘?


「だっ誰でしょう。あ!まっ間違いですかね」

と、森田さんが受話器をとる。

「はい」

「あれ?あ、時任さんのお宅ではないですか」

「え、どちら様ですか。」

「会社のものです」

「........」

森田さん――――っそれは!それは―――!

響さんですよね―――?!


「森田さん、それ会社の上司です」


「え?!なんで家まで?あ あの会社 そ、そんな文化ありました?文化いやこ 交流」


「いえ 無いですが....」


森田さんは頭をワシャワシャのワシャワシャに掻きます。私もとりあえず部屋着を着替えないとっ


ピンポーン


せっかちだなっおい!


「はい!」

あっ勢いで今度は私がインターホンに応答してまった。


「あれ、まこちゃん?」

「はい。......どうされたんですか」

「いや。」

「とりあえず降ります」


あ......どうしようかな。

森田さんの任務と私のセラピストは極秘で、森田さんは響さん以外には顔割れしてて。

で、私は......どうしたい。わからん。



「あ あの 真琴さん。彼に会いたければその、あ 僕が変な存在なら消してください。その、親戚とか、友達とか」


消す?消すなんて、そんな。


「とりあえず 下に行きますね」



「響さん」

「まこちゃん」

「え、あのどうして」

「いや、俺 ごめん。急に来て」

「はい?」

「おーいっまこちゃん!」とさらにやって来たのは吉田さん。

「いやさ、まこちゃん宅襲撃しようってなってさ。こないだから元気なかったし〜響さん連れて行けば喜ぶかなって!」


吉田さん.....。何のノリだよ。


なんて言おう。どうしよう。森田さんにメッセージ、いや......。


「男の人居るよな今。部屋に」

そうだ、響さんはさっき森田さんとインターホン越しにやりとりを。


「え?!? どゆこと?まこちゃん」

「あ、その今、上に、部屋には.....森田さんが」


「えっ森田?なんで?あ、仲良くしてるっつったよね。意外だけどー。じゃ気を使わず行きましょ!」


「森田って、前にうちにいたって若い社員?」


「そうです。なんか静かで不思議くんな感じでね。ねー?まこちゃん」


 吉田さんは、森田さんと聞いた途端遠慮なしで上がりこむ気まんまん。

私は頭が回らず二人を連れエレベーターに。

あぁ森田さん、ごめんなさい。


ピンポーン

「なんで自分ちにピンポーンよ」

「あ、いやその」


森田さん何着てたっけな。あ、穴から先に見てよ。穴から。私達3人を。


カチャ。見なかったね森田さん。いきなり開けたね。


「こんばんは。お久しぶりです。吉田さん」

「おー森田!元気だったぁ?あ、こちらは響さん。あんたのあとに入った上司」

「初めまして 森田 隆史です」

「初めまして 響です。」

「あれ、たかし?森田、あんた名前たかし?」

「はい」

「まこちゃんの猫と一緒か。あ、猫ちゃん見つかった?」


...........たかし、白猫。あぁぁ。


「いえ。っとりあえず入ってください」

「猫って?真琴さん猫飼ってましたか」

いやいや、今聞かないでくださいよ。森田さん。


「あ~まこちゃんがさ、元気なくて猫のたかしが居なくなったって。励ましに飲みに行ったら酔っ払ってさ。ずっとその猫の話よ。」


ストップ!その猫トークストップ願います。

森田さんは目をわずかに大きくして私を見た。知ってるよ今私を見てるの、私は意地でも目を合わせない。だってなんか恥ずかしい。


「へーいいとこ住んでるじゃん。あれ?料理してたの?」

あ、森田さんがなんかしてたんだ。


「あ、はい。えっと」

「野菜スティックです。つまみに ね?ま 真琴さん」

「あぁそうでした。」


そして、ベランダの窓を開け放った吉田さん


全員停止である。


だってそこには......森田さんのパンツ パンツ 靴下 Tシャツ カッターシャツまでが干してあった。

ご丁寧に、吉田さんはベランダの電気までつけていた。

ライトアップされた森田さんのパンツがゆらゆらしていた。

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