謎のスマホ

 こんな時、お酒が飲みたくなってしまう...。

「.....お酒のみますか?少し」と、また森田さん。

「これ」

差し出したのは私がさっきスーパーで買ったビールやハイボールの缶だらけの袋。

ずっと森田さんが警察でも持ってたらしい。

「あ」

苦笑いするしかない。


今度は飲む私をまた見ている森田さん

「あの 森田さんもよかったら、どうぞ」

「少し......落ち着きましたか?」

「あ.....はい。ありがとうございます。」


また沈黙が.......一緒に居てくださいって言ったから居るんだな。

「あの.....帰りたかったら大丈夫ですから。どうぞ、すいません。」

「.......じゃ いただきます」

森田さんはビールに手を伸ばした。

半テンポ、会話も行動もズレている.....。


 スマホを見てから一呼吸置いた森田さんが話し出す。

「さっきの人、下着泥棒だったそうです。」

「え 下着泥棒?」

「はい。えっと、そのスカートの女性を狙い下着を奪って逃走する事件がこのあたりで最近数件あったらしく。」

「あ、そうですか.......。森田さん、話し方ナチュラルですね」

「あ、え そうですか?!」



今日の出来事と、目の前にいる不思議な美青年にいつもの調子が狂いたった1缶のハイボールでクラクラした。

気付けば夜が明けた?

ベッドでちゃんと寝ていたよう。

あれ、森田さんは居ない。


シャワーをし、出勤する準備をしていると、聞き慣れない音がした。

ん?私のスマホじゃないよな。


テーブルに見慣れぬスマホが。森田さんまさか、忘れた?!


新規メッセージ


『ここに連絡しますんで、見たら返事ください

森田より』



え、ナンダこれは?!


私用にスマホ?そんな準備いつしたの?これを渡しに来たのか昨日。なんのため?


いつもばったり会うし、意外に強いし、無駄にどもるし、もう全く森田さんがわかりません。


あ 返信しないと。

『見ました』


『お話があります。今夜またお伺いします』


ナニコレちょっと怖い


『わかりました』



とりあえず、出勤だ出勤。

鍵、あ ポストにちゃんと入れてくれてました。


「おはようございます」

「おはよう。どーした?まこちゃんお疲れ?森田並みに白いし」

「あっ」

まさかの森田さんの名前が。


「大丈夫です。ちょっと週末忙しかったから....」


「こないださ!大阪駅で通り魔事件あったんだって。知ってた?

20代女性と30代女性がカッターナイフで切りつけられ軽症。軽症だから良かったけど、怖いよな。まこちゃんもきをつけなよ〜」

20代男性も切りつけられたけど.....そのまま帰ったし。


昼休み、河野部長代理がオフィスでサンドイッチ食べてたから聞いてみた

「あの 森田さんって、どんなひとでしたか。」

あ しまった私は聞く相手を間違えた。

「んー可愛かったよねー森田」

はあ そうでしたね。


その日は直帰した。

来るという森田さんが気になって気になって、食料の買い出し行く気も無くなったのだ。

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