文字の世界

オッパっピー

文字の世界

むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。

ふたりがのどかなせいかつをおくっていると、どこからかつるがやってきました。

そのつるがいうには、おじいさんとおばあさんのところに、こんどわかものがおとずれるが、そのわかものはこのよのゆうしゃになるひとなので、ていちょうにもてなすひつようがあるらしいのです。

ふたりは、じゅうぶんのどかだからゆうしゃなんていらないね、とはなしました。

ゆうしゃのことをゆうしゃだとしってもふつうのひとのようにもてなす

ろうふうふをみて、ゆうしゃは、このふたりほど、ひとにくべつなくせっするじんかくのよいひとならたいせつなけんをたくせるだろうとおもい、ゆうしゃはけんをいえにおいていきました。

まもなく、せんらんのよがおとずれました。

そして、ふたりにまごができました。

                  ・

                  ・

                  ・

「これって、俺の出番少なくないっすか?」

そう“え”は言った。

「俺、下の方とはいえ、一応50音業界のトップのあ行所属なんすよ。

それなのに一回しか出番がないってひどくないっすか?」

「まあまあ。そんな文句を筆者に言うんじゃないよ。」

「そりゃあ、“か”さんは沢山出られてるし良いですよね。子分の“が”さんも売れてるし。けど、俺や“き”さん、“け”さんのことも考えてやって下さいよ。同じ事務所なんだし。」

その時、どんよりとした集団が通りかかりました。

“か”はそそくさと逃げるようにその場を離れました。

「まだ“え”はいいよ。俺や“ち”や“ぬ”とかのことも考えてくれよ。一回も出番ないんだぜ。」

その団体の一人、“へ”は言った。

「しかも、おれはの子分の“べ”は出てるってのによ…。」

「あたいたちよりもつらいよねえ…。」

「そんな風に言われると、僕も一回も出てないのに申し訳なく感じちゃいますよ。」

そう口々に“ほ”と“み”はいった。

「ええい!もうこうなったら、俺が“か”に成り代わってやる!」

その言葉に、スマホをいじくっていた“え”は驚きました。

しかし、“ち”や“ほ”などは賛成し、

「俺たちも手伝うよ!」

「あたいにまかして!」

と言っていました。

どうなることやら。そう“え”はおもって、帰っていきました。





「本番入りまーす!」

「きょうも“か”さん頑張ってください!」

「応援してます!」

その言葉の主に、一人ずつ手を振り優雅に“か”は歩いてました。

と、その時。

「まぁてまてまて!」

一人の声が響き渡りました。

「今日からは俺が“か”だ!」

皆がその声の方向をみました。

そこにはこんな人影が立っていました。

        

        へ へ

へへへへへへへへへへへへへへ へ

     へ      へ へ

   へ       へ へ

 へ        へ

      へ  へ

        へ

「なんだってー!!!」

みんなは驚きました。そこには、“か”の形をした“へ”が立っていたのです!

「へっへへ。これで今日から俺が“か”だ!」

“へ”は勝ち誇りました。

しかし、“か”は冷静に言いました。

「なあ、“へ”よ。」

「なんだ。そして、俺の名は“か”だ!」

「確かに君は俺の形をしているが、俺の役目まで取ることは出来ない!」

「なんでだ?」

「なぜって、他の文字と比べて、君だけ大きすぎるからさ!」

その言葉を聞いた“へ”は、一瞬唖然とした後、黙って、崩れ落ちました。

筆者含め、スタッフから湧き上がる拍手の渦!

こうして、今日も五十音界の平和は保たれたのでした。

そうそう。さいごに、この昔話に似合った言葉を添えましょう。

           めでたしめでたし。








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