第31話 2週間後に パトリシア視点(1)

 クーレル侯爵家邸で、複数の事件が起きた日。その翌日からも、私達の時間は慌ただしく流れていきました。


『パトリシア様、ハレミット卿。我が娘は本日づけで、勘当致しました。……こちらは、長きに渡るものへの賠償金になります。お納めください』

『…………オーティル卿。わたしは以前、貴方様にご令嬢の行動の改善を訴えました。かつて見て見ぬふりをした方からの謝罪は、受け入れられませんよ』


 あの夜顔にコブができてしまった9人の、父親。当主様が謝罪と言う名の保身を行い、お父様達が毅然と話し合いで解決とならないようにして突き返してくださったり。


『こちらが、原因捜索中に入手した資料となります。そしてもう一方には、白魔術師にまつわる伝承を――ブロンシュ家に関するものを、まとめております』

『…………確かに、ブロンシュ様の仰る通りでございますね。元々メラニーの妄言だと認識しておりましたが、そちらが正式に確定となるでしょう』


 わたくしに生えたコブはテオドールの仕業だ!! メラニー様は懲りずにそう繰り返しているそうですが、テオ―ドール様は否定するためのものを用意していました。そのため治安機関の方とお話しをされたり。


『殿下。黒魔術は、悲劇のみもたらす存在でございます。先ほど申し上げたものは杞憂だとは思いますが、念には念を重ねるべき問題だと思います』

『ああ、そうだな。周辺国とも情報を共有し、可能性を確実に潰しておくとしよう。……#他国の王族__あの者達__#は、自身を苛む脅威を恐れているからな。率先して動くだろうさ』


 万が一、黒魔術の使い方が現存していた場合。新たなメラニー様の出現を防ぐため、に要請を行ったり。


 2人きりで過ごす時間は殆ど取れない程に、タイトな日々が過ぎてゆきました。

 ですが、私のコブがそうであったように――。大変なことには、必ず終わりがあります。


「パトリシア様、お待たせしました。ようやく全てが終わりましたよ」


 クーレル邸内の1階にある、応接室。そちらでお待ちしていたら、テオドール様が『作業』を終えて戻られました。

 この騒動の最後の作業は、クーレル邸の再確認。呪いが視えるテオドール様は念のために、その残滓を見落としていないかのチェックをしてくださっていたのです。


「やはり、不穏な影はどこにもありませんでした。ご安心ください」

「私のために、わざわざありがとうございました。……テオドール様。最後に寄りたい場所があるのですが、ご一緒していただけませんか?」


 作業が終われば、お父様達が待つお屋敷に戻る予定となっていました。ですが、どうしても立ち寄りたくなった場所がありましたので。お願いをして、即了承をいただけたので――。現当主様であるマーク様の許可を取り、とあるスペースへと向かったのでした。

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