第30話 罰を受ける者~その2~ パトリシア視点(2)

「貴男は直接関与していないだけで、同じほどに罪を犯しているのですよ。……いい機会です。これを機に、娘共々貴族界から消えてください」

「………………もっ、申し訳ございません……!! 仰る通りでございました……!! わたしには下心がありましたっ!! こたびの謝罪には、こういった他意が存在しておりましたっ!! ですがっ。この瞬間を以て、そういったものは体内より追い出しました!!」


 もう言い訳はできない。そう、感じたのでしょう。サンデルン様はあっさりと認め、大急ぎで私へと頭を下げました。


「今後は心を入れ替えっ、誠心誠意っ! パトリシア・ハレミット様にっ、貴女様にっ、償いをさせていただきたいと思いますっ! そのためにはっ、どうしても現在の地位などが必要でしてっっ!! せめてっ! わたしが納得いく償いをできるまでっ、現状の維持をお願い致しますっ!!」

「「……………………」」


 何度も何度も、必死に上下する頭。そんな姿を、テオドール様も私も、形容しがたい気持ちで眺めていました。

『わたしが納得いく償いをできるまで』。それは恐らく、一生終わらないのでしょう。


「そちらが済み次第、退きますので!! お待ちくださいませっ!! お願い致しますっ!!」

「…………テオドール様」

「ええ、僕もそう感じております。……サンデルン殿。貴男からの償いも、誰も望んでおりません。お気持ちだけ頂いておきますので、どうぞ安心して身をお引きください」


 メラニー様の時と、同じです。こんな方からの。そして、打算しかないものなんて要りません。


「おっ、お待ちくだされ!! ブロンシュ様っ、お待ち――」

「……しつこいぞ。貴様は貴族間のルールも忘れたのか?」


 たまらず縋りつこうとしていたサンデルン様の動きが、ピタリと止まります。冷たい言葉の発生と共に、鋭い視線に射貫かれたからです。


「貴族と貴族の間で大きな事件が起きた場合、事後の保証は両家の相談によって決定する。この国でもそうなっているはずだ」

「そっ、それはそうですがっ!! あまりに法外な要望は認められないと――」

「そうだな、その場合は第三者が間に入るようになっている。……あの出来事に対するこの反応、それが法外だと貴様は思っているのか?」


 呪いの実行と、元凶にも関わらず繰り返された嫌がらせ。娘の行動の容認、などなど。問題行動は多数あり、法外には含まれません。


「それは……。その……。そう、ですが……。こうして、誠心誠意償わせていただくと――」

「そんなものは不要だと、被害者が仰っている。それになによりだ、サンデルン。どうして貴様は、一方的な押し付けで相殺しようとしているんだ?」

「ひぃっ!!」


 更に鋭く、冷たくなった視線。それによってサンデルン様の体が、おもわず下がりました。


「……これ以上パトリシア様の前で醜態を晒すのであれば、こちらにも考えがある。持てる力を全て使い、それを味わう羽目になるが――。それでもいいのだな?」

「いっ、いえっ!! いいえっ!! よくないっっ、ありっっ! いいありませんっ!」


 テオドール様は筆頭公爵家ですし、全身から放たれる怒気は夥しい量でしたので。サンデルン様は震え上がり、何度も何度も顎が引かれました。


「…………分かればいいんだ。では」

「直ちに行います!! 行わせていただきます!!」


 そうしてサンダルン様は会場を飛び出し、僅か数時間後でした。恐るべき速度で当主の座は返上され、クーレル家から2人の人間がいなくなったのでした――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る