第28話 5日後~終わりの始まりは、予想外の光景と共に~ メラニー視点(3)

「呪い……? なんの話をされているんだ……?」

「パトリシア様を見た後、クーレル様を指を差されたから……。え……? え……!?」

「クーレル様が、ハレミットさんに呪いをかけた……!? あのコブは病気とかじゃなくって、クレール様の仕業だったって事……!?」


「ちっ、違いますわっ!! わたくしはそんな真似はしていませんわっ!! テオドール様っ、おかしな発言は止めてくださいましっ!!」


 他の参加者たちが一斉にざわつき始め、大声で慌てて否定をする。

 こんな噂が広まってしまったら、人生が終わってしまいますものっ! 絶対に食い止めますわ!!


「呪いなんて、空想上の存在ですわ。そんなもの、ありはしませ――」

「いえ、ありますよ。具体的に言うと、場所は貴女のデスクの三段目の引き出しの中。その素となっているのは、パトリシア様の毛髪とご自身の爪を入れた、顔部分に血で魔法陣を描いた人形です」


 ……やはり、この人は知っている……。

 これまでは挨拶以外の会話をしたことはほぼなく、わたくしについて殆ど知識がないのに……。どうやって知得しましたの……!?


「気になっているようですので、経緯をお伝えしましょう。実を言いますと僕は不思議な目を持っておりまして、色々なものが視えるのです。その中の一つが、呪だった。パトリシア様のコブから伸びるその痕跡が貴女と人形に繋がっており、全てに気が付けたのですよ」

「そ、そんな……っ。そんな力が――」

「あるのですよ。だから僕は5日前に貴女の屋敷を訪ね、隙をついて人形内の毛髪を千切っておいたんです。……メラニー様、カギをかけているからと安心していましたね? ああいったものは想像以上に、あっさりと開けられるのですよ」


 っっ!! あの来訪は、そのためのもの……っ。

 わたくしを、騙しましたのね……!!


「ブロンシュ様がいらっしゃった際にトラブルが起きて、熱心に介抱していただいた。そのお話しを、先日伺っていますわ……。ということは……」

「そう、なりますわね……」

「デスク内には、真っ赤な魔法陣付きの人形があります。ですので」

侍女リエスっ! いますぐカギを開けて処分なさい!!》


 だから証拠を確保されないように、アイコンタクトでメッセージを伝えるっ。

 聡明な方と聞いていましたが、詰めが甘いですわねっ。万が一の発覚に備えて、すでに黒魔術に関する書物は焼き払っていますもの……っ。

 あれさえなければ、証拠はないっ。証拠がないなら、わたくしを裁くことは不可能――


「懸命に隠蔽の指示を出しているようですが、それは無意味ですよ。なぜならその証拠は、これから表れてしまうのですから」


 ――と心の中でほくそ笑んでいたら、呆れまじりの哄笑がやって来た。

 これから、証拠が表れる? なにを言って――


「ぁぎぃ!?」


 ――ぁ、ぁぁ……っ。ぁぁぁぁぁ……っ!


「ぃぃぃぃぃ……!! か、かお、がぁ……!!」


 顔が……っ。全体が……っっ。皮膚が……っ。隆起を、始めて…………っ。

 顔中に……っ。わたくしの顔中にぃぃぃぃ……っっ!


 コブが、出来てしまった……!!

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