第28話 5日後~終わりの始まりは、予想外の光景と共に~ メラニー視点(2)

「か、顔が、あの頃に、なっている……。綺麗に、なっている……」


 何度目を擦っても、変わらない……。


 積もったばかりの雪ような、真っ白で綺麗な肌。色素の薄い、ふわりとした髪の毛。その下にある可愛らしいタレ目と、小さめの愛らしい体。柔らかさを含んだ心地の良い声。


 あの日見た、雪ウサギが……。宝石が……。そこに、居る…………。


「どう、して……? 元通りに……? なにが、あった、ん、です、の……?」


 あのコブは呪いによるもので、どんな薬も効かない。自然に回復だってしない。

 あの人形はわたくしの部屋にあって、わたくしは何もしていないのに……っ。なぜ…………!?


「今から5日目のことです、急に顔からコブが消えたのですよ。私もお父様もお母様もテオドール様も驚いてしまい、暫く混乱してしまいました」

「へ、へえ……。そう、なんですの……」


 混乱っ? わたくしの方が混乱しているわよ!!

 なんなんですのこれ!! なんなんですのこれは!?


((もしかして……。呪いは、一定期間で解ける……!? …………いいえっ! それはあり得ないわ!!))


 あの紙切れには、触媒がある限り続くと書いてあった!!

 黒魔術が成功したのだから、そこだけが間違っているなんてない!! 効果が消えるはずはないわ……っ!!


((じゃあ、どうして……!? どうしてなぜ……!?))


 人形は部屋にあるのにっっ!! コブは消えてしまっているの!?

 いつっ、5日前に!! 何があったというの!?


((なにも特別なことはなかった!! その日もいつも通りで――ち、違う……))


『なんだ、そうだったのか。あのような事があったばかりだからな。ライザもわたしも、過敏になっていたようだ』


 あの日は突然意識を失って……。気が付いたら、テオドール様が傍にいてくださっていた…………。わたくしの部屋に、居た………………。


((まさか…………。テオドール様が、なにかした……?))


 その日起きた『普段と違うこと』は、これしかない。

 だから……。だから……っ。嘘みたいな話だけれど――


「ようやく、気が付いたようですね。そうですよ。僕があの日、貴女が仕掛けた呪いを解いたのですよ」


 ――テオドール様はクスリと笑い、わたくしを指さした…………。

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