第28話 5日後~終わりの始まりは、予想外の光景と共に~ メラニー視点(1)
「メラニー、具合はどうだ? どこかに違和感はないか?」
「どこにもありませんわ。調子はすこぶる快調ですわ」
テオドール様がいらっしゃった日から、5日後。わたくしは屋敷内にある医務室で、お父様に大きく頷いていました。
「だが、な。さっき――会場で、レーランス卿の令息と話しをしている時だな。
「ぁあ。そちらは、体調不良とは無関係ですわ。あの方の到着が待ち遠しくて、興奮していましたの」
今夜も我が邸でパーティーが開かれる事になっており、なんと今夜もテオドール様から『参加する』とのお返事をいただいていますの。ほぼ確実に今日こそダンスを行えるので、ついつい昂ってしまっていましたのっ。
「いついらっしゃるのかしら? もうそろそろかしら? それが気になって、ワクワク、ソワソワしてしまっていましたの」
「なんだ、そうだったのか。あのような事があったばかりだからな。ライザもわたしも、過敏になっていたようだ」
テオドール様がいらっしゃった日、わたくしは突然意識を失った。生まれて初めてのことで戸惑ったものの異常はなかったようですし、なんとテオドール様が介抱してくれていましたの……っ。
そのためあのイベントは至福のイベントと化し、わたくしにとっては良い思い出となっているんですわよねぇ。
「
「ええ。今夜は最高の夜になりそうですし。たっぷりと楽しんできますわ」
あの方とのダンスと、トーク。もしかしたらそのあとに、何かしらのプラスアルファもあるかもしれない――。
そんなことを考えながら廊下を進み、上機嫌で会場に戻――
「あら? なにかしら、あの人だかりは……?」
――会場に戻ると、中央付近に人山ができていた。あれは、なにかしら……?
「あっ、メラニー様っ! いらしてくださいましっ! 大変ですわっ!」
「たい、へん……? 何が大変なんですの?」
「それは――ご覧になられるのが一番ですわっ! さあっ!! こちらへっ!!」
懇意にしている、テルタン伯爵家のフィアーナ。いつもは落ち着いている彼女に手を引っ張られ、黒山を覗き込む。
この人が、こんなにも取り乱すだなんて。そこになにが――
「…………………………」
黒山の中心を目にした私は、言葉を失ってしまった。
だ、だって……。そこには…………。
憧れの、テオドール様と…………。
「ごきげんよう、メラニー様。招待いただき感謝いたします」
コブ一つない、パトリシアが…………。
宝石が、居たのだから……………………。
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