第27話 ブロンシュ公爵家 パトリシア視点

「お前が初めて黒魔術師の情報を手に入れた、隣国。そこで呪いについて調べていたら、やけにそれに関する情報が多い村があってな。そこを訪れてみたら、こういったものが受け継がれていたのだよ」

「……そう、だったのですか。それは……」

「テオドール様と同じ、ですね」


 呪が視える。呪いを断ち切れる。全てが、一致しています。

 そして……っ。


「そして、隣国の公爵家。もしかして……」

「ええ、パトリシアちゃん。ソレは、ブロンシュ家よ」

「テオドール。ブロンシュ家誕生の経緯は、当然知っているな?」

「はい。我が家(いえ)は229年前に、再誕しました。当時の当主の判断により、『ローエステル家』はブロンシュ家へとその名を変えました」


 そのお話は、知りませんでした。そんな、珍しい出来事があったのですね……っ。


「ブロンシュ。それに込められている意味は伝わっておらず、誰も真意を掴めなかった。だがようやく、ソレを理解できた」

「ブロンシュ。それはその村のフランス語方言#で、『白魔術師』。恐らくは黒魔術師の対、正反対の人という意味を込めて、功績を称えて、当時の当主様が付けたみたいなの」


 ご本人様は、自分の存在であり偉業を隠そうとしていた。当時の当主様は意を汲んでいたけど、多くの敬意を抱いていた。そこで亡くなられた際に、誇らしい人がいた、という意味を込めて家名にした。

 アルノー様やお父様はそう考えられていて、私も――テオドール様も。そうなのだと感じました。


「…………なるほど。僕に備わっていた力は、その方のお力。所謂先祖返りが発生していたのですね」

「うむ、そうだったようだ。歴史は繰り返す、のだな」


 どこからか黒魔術師が現れて、その方によって企みが阻止されて。再び呪いを使う者が現れて、真逆の力を持つ方によって阻止される。

 同じことが、繰り返されています。


「ですが父上、それは今回で終わりとなります。今後はもう、こんなループは起きませんよ」

「ああ、そうだな。まったく。次期当主殿は、どこまでも頭が回る男だよ」

「お褒めにあずかり、光栄でございます。5日後――1日と半分が経っているので、3日後ですね。早く訪れて欲しいものです」


 その言葉に、お父様、お母様、アルノー様、ベルナデット様、私。その場にいる全員が頷き、このお話はお仕舞いとなりました。

 そうして真面目なお話が終わるや、


「じゃあパトリシアちゃん、テオドール。パーティーを始めましょっかっ!」


 ベルナデット様の一言によって、一気に邸内が賑やかになります。

 そのまま食堂に集まって『回復』と『成功』を祝したお祝いが始まり、また、そうなってしまうのは当然ですよね。私は沢山の笑顔に包まれて、また沢山の嬉し涙を零して、素敵な方々と素敵な時間を、たっぷり――なんと4時間以上も、共有したのでした……っ。

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