第26話 とある村に伝わる、とあるお話 俯瞰視点

 昔々あるところに、悪い人間達がいました。

 その者達の名前は、『黒魔術師』。彼らは一族に伝わる悪い力・黒魔術を使い、色々な悪さをしてきました。

 自分達が気に食わない人を、呪ったり。たくさんのお金をもらって、その人が嫌いな人を呪ったり。毎日毎日、悪いことをしていました。


『はははははっ! 俺達は無敵っ! 選ばれし存在だっ!』

『貴族でも、王でもっ。俺達には敵わない! 地上の神だ!!』


 黒魔術師が使う力は強力で、誰も逆らえませんでした。そのため彼らを止めることはできず、黒魔術師が暗躍する時代は何十年も続くことになったのです。


 ですが。

 ある日。1人の女性が現れたことによって、世の中は大きく変化をすることになります。


『……貴方たちですね? 私利私欲で人を殺め、この村を支配し、村民を奴隷のように扱っているのは』

『おう、そうだ。んで、それがどうしたんだ?』

『…………こんな時間は、わたしが終わらせます。終幕の刻ですよ』

『ぷっ、何言ってんだこの女っ! 俺達は神なんだぞっ? どうやって終わりにするつも――なっ!? 力が使えない!?』

『俺もだっ! コイツを呪えねぇ!? どうなってやがるっっ!?』

『私は呪を視覚で捉え、この手で断ち切れる力があるのですよ。私が近くに居る限り、発動はできませんよ。……そして』


 その女性はすぅっと、目の前にいる男達を指さしました。すると、


『ぎゃあああああああああ!? 顔がっ!? 体がっ! 溶けていく!?』

『おれはっ、体がぁっ、膨らんでいるっ!? てめえぇぇ!! なにをしやがったぁぁっ!!』

『私は、何もしていませんよ。私は、ね』

『なっ、なにを言ってやがるんだ!! はっきりと――ぎっ! ぎやあああああああああああああああ………………』

『くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! ぁ、がぁぁああああぁぁぁ………………』


 そうして悪い黒魔術師は一人また一人と減ってゆき、やがてその村から――この世から、黒魔術師はいなくなりました。


『皆さん、もう安心ですよ。貴方がたは自由です』

『『『『『ぁ、ぁりがとうございます……っ。ありがとうございます……っ。神様が、降臨なさった……!』

『わたしは、そんな大層な身分ではございません。……大きな力は、新たな火種を生む原因となりかねません。この件は、内密にお願いしますね』


 その後女性は一切誇ることなくその場を去り、村には平和が訪れました。


 そして――。


 それから70年後。となったその女性が、この世を去った日。その報を知った村民たちは悲しみの涙と感謝の涙を零し、まもなく――。その村では、新しいおとぎ話が誕生したのでした。


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