第25話 祝福と、発見 パトリシア視点

「ぉぉ……っ。パトリシア……!」

「よかった……っ。よかったわ……っ。呪いがとけて、よかった……っっ!」

「パトリシアくん、おめでとう。……今まで、よく頑張ったね」

「おめでとうね、パトリシアちゃんっ。今夜はパーティーよっ!」


 テオドール様と私がブロンシュ家に到着してから、およそ半日後。コブが消えてから、1日と十数時間後のこと。お父様とお母様、アルノー様とベルナデット様を乗せた馬車が戻り、私はお出迎えをしたエントランスで4方向から抱き締められました。


「どう足掻いても、結果が出ず……。親子で、心から笑い合う……っ。それはもう、不可能だと……諦めかけていた…………!」

「だけどパトリシアは心から笑っていて、わたし達もおなじ。夢みたいだわ……っ」

「我々は、一切気にしない。しかしながら世の中には、元兄のような人間が要る。……パトリシアくん。君はもう、自由だ」

「誰の目も気にせず、堂々としていられるわよね。落ち着いたら、今までできなかったことを沢山やりましょうねっ」

「はい……っ。はい……っっ。お父様、お母様。アルノー様、ベルナデット様。ありがとう、ございます……っ」


 お父様とお母様は何年間も、必死になって動き支えてくださいました。そしてアルノー様とベルナデット様は、親身になって私を守ってくれました。

 そんな方からこんな祝福を頂いたのですから、そうなるのは必然的です。私は大粒の涙を流しながら、にっこりとした笑みを浮かべました。


「皆様のおかげで……っ。テオドール様のおかげで……っ。私は今、皆様とこうしていられます……っ」

「ああっ、ああ……っ。そうだな……っ。…………テオドール様」


 涙を零しながら、何度も頷いてくださっていたお父様。そんなお父様はハンカチでお母様と自分の涙を拭うと、お母様と共にテオドール様へと体全体を向けました。


「テオドール様……っ。全ては、貴方様のご尽力によるものです……っ。娘に、我々に。数々の光を与えてくださり、まことにありがとうございます……!!」

「あの夜貴方様がお声をかけてくださらなければ、この未来はありませんでした。一家全員に希望をくださり、ありがとうございます……っ」

「全てが上手くいってくれて、よかったですよ。長い戦いは、ひとまず終わりを告げましたね」

「うむ、テオドール。とりあえず、ピリオドを打てたな」


 お辞儀と握手を行っていた、お父様とお母様。そしてアルノー様とベルナデット様も、大きく頷かれました。

 伝書鳩さんの手紙によって、皆様も『5日後』の意味を知っています。この問題はその日に、完全にお仕舞いとなります。


「テオドール、よくやってくれた。流石はブロンシュ家次期当主だ」

「わたくし達が集めた資料と情報。それらの大半が無駄になってくれて、よかったわ」


 お父様、お母様。アルノー様、ベルナデット様。そしてブロンシュ家に仕える十八名の方々。皆様は万が一計画が失敗した時に備え、テオドール様の依頼によって呪いに関するものを集めてくださっていたそうです。


「大半、ですか? 母上、現状でも有益となるものがあったのでしょうか?」

「ええ。父アルノーこの人が偶然、こんな昔話を見つけたの。テオドール、パトリシアちゃんも。聴いて頂戴ね」


 ベルナデット様は使用人の方から数枚の紙を受け取り、そこにある文字を読み上げ始めました。

 この状況で、有益……。いったいなんなのでしょう……?

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