第23話 2つの変化 パトリシア&テオドール視点
「「「っっ! ハレミット様!!」」」
窓の傍で両手組んで目を瞑り、南南西へと――テオドール様がいらっしゃる方角へと、祈りを捧げていた時でした。周囲で一斉に、護衛の方のお声が上がりました。
「これは……っ。これは……っっ」
「ああっ! そうだっ。そうに違いないっ!」
「ハレミット様っ! お目をっ! 両目をお開けくださいっ!!」
「は、はい。なにがあ――っ!? 視界が…………。広い、です……」
いつもの、倍以上。あの頃のように、スッキリと見えます。
「これは……。この視野は……っっ」
「ええっ、こちらをご覧くださいっ! コブは全てっ、消えております!!」
興奮によって激しく震える両手によって向けられた、鏡。そこには、凹凸のない私が映っていました……っ。
「でこぼこが、ありません……っ。口を動かしても、瞬きをしても、違和感はありません……っ。…………テオドール様が、解いてくださったのですね……っ」
こんなことは、自然に起きません。あの方の、おかげです……!
「テオドール様……っ。テオドール様……っっ。ありがとうございます……っ! ありがとう、ござい、ます……っ」
大粒の涙が零れている、あの頃の私。私は数年ぶりに会う私を見つめながら、何度も何度も感謝の言葉を繰り返したのでした。
〇〇
「あの様子――。どうやら、呪いが解けると元通りになるようだ。……よかった」
パトリシア様へと伸びていた管の、消失。それを確認した僕は、大きな安堵の息を零していた。
管の中を禍々しい光が通り、この人形に全てが入り込んだ直後に管は消滅した。これはそういう事で、今頃パトリシア様からコブが消えているのだろう。
「お顔が元に戻れば、堂々と外出できるようになる。本当に、よかった――ん? これは……」
改めて、安堵の息を吐いていた時だった。そんな人形から禍々しい輝きが飛び出し、あらゆる方向に飛び散っていった。
「その中の大きな一つはメラニーの体内に入り、残りは外へと飛んでいった。…………これは、そういう事か」
だとしたら、今は、何もするべきではない。僕は取り出した人形を縫い合わせて引き出しに仕舞い、ベッドに戻って介抱を再開。その後医者の到着に合わせてクーレル邸を去り、パトリシア様のもとへと急いだのだった。
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