第22話 発見と テオドール視点

「管伸びている先は……。デスクの引き出しだな」


 クーレル卿達を見送ったあと、念のために部屋を施錠。誰も邪魔できないようにして、部屋の左奥にある大きなデスクへと歩み寄った。


「…………思っていた通り、鍵がかかっているか。けれど、何も問題はない」


 出発前に用意していた2つの金属製の細い棒工具を取り出し、片方を鍵穴に差し込み、その状態でもう一方を差し込み細かく動かす。そうすればやがてカチっという音がして、ロックは解除された。


「……こんなところで、この技術が役に立つなんてね。やはり、覚えておくに越した事はないな」


 この目のおかげで、周囲には悪しき者が沢山いると知っていた。そこで拘束、監禁などが発生した際対処できるよう、解錠のスキルを身につけていたのだ。


「これで、邪魔はなくなった。…………開けよう」


 上から三つ目の引き出し。その取っ手に右手をかけ、手前へと引っ張る。そうすれば――顔の部分に血で魔法陣が描かれた、十センチほどの人形が現れた。


「…………禍々しい光景だな…………。人間の所業とは思えない」


 広々としたベッドで呑気に寝息を立てる、メラニー。#アレ__・・__#に対して更なる嫌悪が沸き上がるが、早くしなければ何かしらの邪魔が入るかもしれない。そのため人形を手に取り、腹部を縫い合わせている糸を切って解いてゆく。


「この中が、最もどす黒い。恐らくはこの中に…………………………あった。これが、呪いの『もと』だ」


 人形の中心に詰め込まれていた、色素の薄い1本の髪の毛。これが、パトリシア様を苛んでいた原因だ。


「……髪を入れることで、その人間に呪をかける仕組みか……。取り出しただけでは変化がない、という事は」


 ――切ればいい――。


 なぜだか、すぐにそれが分かった。

 そして。この髪は、ハサミなどでは切れないという事も分かった。


「…………なるほど。僕が、引っ張ればいいんだな」


 どうしてそうなのか、そうできてしまえるのか、相変わらずその理由は分からない。けれど、そうすれば呪いを消せるのだと分かっている。

 まるで、以前から知っていたかのように。


「……目といい管といい、僕は本当に不思議な人間だ。不気味さを覚えてしまうが、そのおかげで今も昔も窮地を凌げる。感謝しないといけないな」


 この体。生来宿る『何か』に礼をしつつ、左右の手で思い切り毛髪を引っ張る。そうすれば、


 パン、っと。


 髪は弾けるように千切れ、やがては砂のようになって消滅。そしてそれを合図に禍々しい輝きはなくなり、メラニーから伸びていた多数の管もまた消滅。

 パトリシア様を苛んでいた呪いは、無事解除された。

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