第21話 眠った理由と、2つ目の行動 俯瞰視点

「…………やっと効いたか。持ってきていて正解だったな」


 ソファーで横たわり、規則正しい寝息を立てるメラニー。そんな悪女を見下ろしながら、テオドールは懐から小瓶を――睡眠薬が入っていた小瓶を取り出しました。


『お話しをしていたら、喉が渇いてしまいましたね。すみませんが、#紅茶を淹れてきてもらえますか__紅茶のお代わりをいただけますか__#?』

『はいっ、少々お待ちくださいませ。わたくしが淹れてまいりますっ』


 まずはメラニーを追い出し、その隙に懐から小瓶を取り出す。そしてスノーボールクッキーブールドネージュに振りかけ、ソレを勧めて食べさせる。


「テオドール様、ありがとうございます。美味しいですわ」


 メラニーはテオドールを警戒してはいませんでしたし、ブールドネージュはシュガーパウダーがかかったお菓子。そのため彼女は仕込みに気付くことなく口にしていたのです。

 もちろん――。手土産をブールドネージュにしたのは、睡眠薬のカムフラージュのためでした。


「すぅ……。すぅ……。すぅ……。すぅ……」

「1つ目は、上手くいった。これで、この管を辿れる」


 メラニーからはパトリシアから伸びるもの以外にも1本、それも一回り以上大きな闇色の管が伸びていました。

 この管が伸びている方向は、斜め上。恐らくは部屋へと続いていて、触媒と繋がっているのだとテオドールは確信していました。


「いちいち探す手間が省けたのは、僥倖だな。…………さて、2つ目を始めるか」


 懐に小瓶を仕舞ったテオドールは、深呼吸を一つ。息を吸って吐くと顔には戸惑いの色が多く表れるようになり、乱暴に扉を開けて大声を上げます。

 そうすると――


「ブロンシュ様!? どっ。どうなさったのですか!?」


 ――ちょうど、何かの相談をしていたのでしょう。家令と共に、髭を蓄えた男性が――メラニーの父・サンデルンがやって来て、


「メラニー様が突然、このような状態となってしまったのです……。至急お医者様の手配をお願い致します」

「っっ! はっ、はいっ! 家令バリスっ、連絡をしてくれ!」

「クーレル卿、ソファーの上ではお体に負担がかかってしまいます。スペースに余裕があり、体を伸ばせる場所…………は、あそこか。メラニー様の私室にお運びいたします」


 そうしてテオドールは素早く横抱きにし、眠っているメラニーを2階にあるベッドへと運びました。


「テオドール様。感謝いたします」

「当然の事でございますよ。……お医者様が到着されるまで、僕がメラニー様のお傍についております。ご安心ください」


 そしてその後は言葉巧みにサンデルンや侍女を追い出し、密室の出来上がり。室内を自由に捜索できる環境が整い、テオドールは即座に、動き出したのでした。

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