第20話 ほくそ笑むメラニー 俯瞰視点

「はいっ、少々お待ちくださいませ。わたくしが淹れてまいりますっ」


 愛しのテオドール様からのお願いを受け、笑顔で応接室を出た後――。厨房を目指していたメラニーの口角は、しだいに吊り上がっていきました。


((うふふ。ふふふふふ。計画通りに、進んでいますわね))


『ず~っと原因不明の発熱が続く女なんかと、一緒にいる人はいない。テオドール様との縁は、もうじきお仕舞いよぉ』


 部屋にある禍々しい触媒物体を使い、新たな呪いを送った際。彼女は、このように大笑いをしていました。

 そしてテオドールの表情、口調、仕草からそういった気配を感じ、笑いが止まらなくなっていたのです。


((そうそう、そうですわ。どんなに真面目な方でも、原因不明の発熱は気味悪く感じてしまいますわよねぇ。……一度わたくしから全てを奪い、今度は想いを寄せていたテオドール様を奪ったパトリシア。また、奪い返してやりますわよぉ))


 今はじわじわと、揺れてきている。わたくしの美貌と巧みな話術で、揺れ幅を大きくしますわ……っ。今日で最後ではなくって、また訪れたくなるように……っ。5日後のパーティーにも、参加したくなるようにしますわ……っ。

 メラニーはそんなことを考えながら自ら紅茶を淹れ、そういった邪心を表情から消して、応接室へと戻ります。

 そして愛を込めたダージリンを注いで提供し、感謝と共に勧められたお土産ブルードネージュをパクリ。初めてもらったを改めて味わい、曰く美貌と巧みな話術を使い、懸命に好感度を上げていきます。


((ふふ、ふふふっ。良い調子ですわ))


 手ごたえは、あり。そのため更にメラニーは勢い付き、嬉々として口を動かしてゆき――


「ふぁぁ」


 ――ふいに、大きなあくびが出てしまいました。


「まあ、わたくしったら……。テオドール様、失礼を――ふぁぁ」


 非礼を詫びていたら、また大あくび。独りでに再び出てしまい、更には。眠気も襲ってきました。


((こんな時に、眠くなるなんて……っ。わたくしっ、しっかりしな…………さ…………))


 自身を叱咤していたメラニーでしたが、思考回路までもがふわふわとしてきてしまいました。

 起きなさいっ。そう言い聞かせても、駄目。


((むり、です、わ……。ねむたくて、しかたがな――)「…………すぅ、すぅ、すぅ………………」


 抵抗空しくメラニーはソファーに倒れ、規則正しい寝息をたて始めたのでした。


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