第19話 接触 テオドール視点

「こうして、テオドール様とお時間を過ごせるだなんて。幸せですわ」


 パトリシア様と別れてから、四十数分後。僕はクーレル邸内にある応接室にいて、メラニーが自ら上機嫌で紅茶と焼き菓子を持ってきた。


((……予想通り。簡単に潜入できたな))



「まあテオドール様っ! どうなさったのですか!?」

「メラニー様、突然申し訳ございません。先日のお詫びをしなければ、そう思っておりまして。本日エリルズを訪れる事が叶いましたので、こうして伺いました」


「あの夜は複数回、お誘いをいささか乱暴に断ってしまいました。メラニー様に恥をかかせてしまった事を、お許しください」

「そのために、わざわざ……っ。いえっ、いえっっ。お顔をお上げください……っ。そのお言葉をいただけだだけで幸せですわ……っ」


「こちら、お詫びの品となります。よろしければお召し上がりください」

「お気遣い、痛み入りますわ。……あ、あの。テオドール様。お時間は、おありでしょうか?」

「え? はい、ございますよ。どうされたのですか?」

「でしたら…………いただいたこのお菓子と紅茶で、わたくしとお茶をしてはいただけないでしょうか? 実を言いますと、ずっとご一緒したいと思っておりました」


 そうして僕は2人きりの状況を作り、けれど、まだ動きはしない。

 次のステップに進むには、時間の経過が必要不可欠。そこで条件が整うよう、会話を行ってゆく。


「…………そう、なのですね……。パトリシア様が、お熱を……」

「はい、原因不明の発熱が続いているようです。お医者様も原因不明と仰られているようでして……。静観しかできないとの事です」


「心配ですわね……。パトリシア様はお顔を気にされていて、数年前より外出が極端に減っていると聞きます。そちらも関係あるのかもしれませんわ……」

「パーティー以外は、敷地内から出ることはなかったそうです。そうなのかも、しれません」

「実はわたくしは、お外に出る機会が増えれば、と何度もお誘いをしていたのです。……もっと強引に誘っていれば……。こうなっていなかったのでは、と考えてしまいますわ……」


 予想通り、新たな呪いの解呪に気付いていないメラニー。彼女は元凶にもかかわらず平気で嘯き、それによって激しい怒りがこみ上げてくる。

 しかしながらここで感情的になってしまえば、全てが無駄になってしまう。そのため引き続き我慢をして二十数分会話を行い、ようやく条件が整った。

 そのため僕は次のステップへと進むべく、彼女にこう告げたのだった。


「お話しをしていたら、喉が渇いてしまいましたね。すみません、紅茶を淹れてきてもらえますか紅茶のお代わりをいただけますか?」

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