第3話 家族への報告と、うごめく悪意 パトリシア&俯瞰視点

「パトリシア……っ! そうか、そうか……っ。よかったな……っ」

「ええ、あなた……っ。よかったわね……っ。パトリシア、おめでとう……っ」


 素敵な想いをいただき、素敵な方の恋人にさせていただいたあと――。私は自邸に戻ってあの出来事を説明し、そうするとヤニックお父様とカロルお母様は涙を浮かべて喜んでくださりました。

 お父様とお母様は私がこんな姿になっても、なにも変わりませんでした。今までのように愛してくれて、私の幸せを願ってくださっていましたので。左右からぎゅっと、抱き締められました。


「本当に、よかった……っ。『見て』くださる方がいてくださって、本当によかった……!」

「こんなに嬉しい事は、ないわ。きっと長くなってしまうけれど、3日後にお会いしたらこの気持ちを全て伝えさせていただくわ……っ」


 できれば即座に#挨拶__報告__#をされたかったようですが、ブロンシュさま――テオドール様は元々、隙間を縫って参加されていました。そのため今夜は会場でお別れとなり、明々後日の午後3時にいらっしゃられる約束となっています。

 隣国・メイルンでは身分に関係なく、まずは男性が女性の#家__家族__#を訪ねる決まりがありますので。まずはテオドール様と一緒に改めてお父様とお母様に報告をして、そのあと、家としての今後の予定を――ブロンシュ公爵家へのご挨拶などの日程を、相談して決めます。そしてそれが済めば、私のお部屋でお茶をすることになっているのです……っ。


「カロル、3日後は大事な日となるぞ。時間は、余裕があるようでない。朝から一丸となって準備を行おうではないかっ」

「そうね、あなた……! 最高の席にしましょう……っ!」


 お父様とお母様は迷わず午前5時の起床を決め、今はすでに23時を大きく回っているため、そろそろ眠らないといけません。ですが『今夜は最高の日』と仰られてプチパーティーが始まり、


 3年ぶり、でした。


 食堂には、心からの笑い声が響き渡ったのでした。



 〇〇



「『化け物令嬢』のくせに……っ、ブロンシュ様と恋人になるなんて……!!」


 白を基調とした、広々とした私室。えりすぐりの家具が配置された優雅な空間、その中央。豪華な照明の真下では、ギリギリとした歯噛みが行われていました。


「コブだらけで気持ち悪い癖に……っ。今まではずっと、どんよりしてたくせに……っっ。生意気ですわ……っ!!」


 傍にあるクマのぬいぐるみを蹴り飛ばして八つ当たり行い、けれど、まだ怒りは収まりません。転がったぬいぐるみを追いかけて何度も何度も踏みつけ、ようやくある程度の落ち着きを取り戻した部屋の主――一人の、少女。

 彼女は綿が飛び出したぬいぐるみを一瞥した後、にやりと口角を吊り上げました。


「パトリシア、覚悟しなさいよぉ。、お仕置きをしてあげるわぁ……!!」


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