小芝居

 私の仕事は警備員。今までいくつか別の職にも就いてきたが、結局の所ここに戻ってきてしまう。天職、いや、そんな崇高なものではあるまい。


「警備員のおじさんって夏でも長袖着てて暑そう」


 どこぞの小娘の台詞。確かに暑い盛りの今、私も長袖だ。だが小娘よ、私は長袖でなければ仕事に集中できないのだ。心配するな、熱中症対策は万全だ。


 常に気怠けだるげな雰囲気をかもし出している小娘は、私の仕事が二十四時間体制だと知ったら驚くだろうか。そんなに働くなんて信じられない、と。まあ小娘よ、世の中にはお前が想像している以上に様々な仕事の形があるのだ。小娘、そう言えばお前は今いくつだ?


「あなたが一番知ってるでしょ」


「さっきから上から目線で偉そうに」


「漢字、間違ってるんじゃない?さっさと直して行動に移しなさいよ、この怠け者」

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