騒動の収束
報告 ※他視点
ガーレット国の王城内にある一室。そこにホレスの報告を聞くため、宰相と第2王子であるグリーが集まっていた。
「すでにアレンシア王国の者と婚姻していただと? それは本当か? こちらへ返さないための虚偽ではないのか?」
ホレスがグレシア辺境伯の言葉を持ち帰ると、それを聞いたガーレット国第2王子のグリーがそう疑念を持った。
「まあ、私としては予想の範囲以内ではありましたな」
「は? 宰相、それはどういう事でしょうか?」
ホレスからの報告を聞いていた宰相がさして驚いた様子もなくそう言い放った。それを聞いたホレスは信じられない物を見たかのような表情をして宰相を見る。
それもそうだろう。ホレスは宰相から直接、聖女としてのレミリアを国へ連れ帰る任を与えられたのだ。それが最初から失敗するものだと思われていたなど思う訳もない。しかし、実際は高確率で失敗するものだったとなれば驚きもするはずだ。
「捜索を始めるのが遅かった。それもあるが、1度国境で追い返されたことが有った。対応としては普通の事ではあるが、その段階で何か手を打たれていても不思議ではなかった。そもそも回復士というのはどの国でも求められている存在だからな。ましてや、あの者の能力を知っていれば逃すという選択はそうしなかろう」
「ではなぜ私に連れ戻すようにと……」
「そうだな。遠征もただでは行えない。無駄になるとわかっていてなぜだ?」
その疑問は当然だろう。最初から失敗する。無駄足になるようなことをさせられたのだ。どのような意味を持つものだったのかを知ろうとするのはおかしくはない。
だが、この辺りを察することが出来ていない所が、ホレスやグリーの考えの足りない所だろう。
「ガーレット国がレミリア嬢、特に回復士を軽視していないことを示すための行動だ。聖女とまで他国に広めていた回復士を国外に逃亡させ、何も行動を起こさないのは他国からどう思われるか。ただでさえ国の中でも王族の評判は悪いのだ。他国からもそう見られるのは避けたい」
宰相は少しは自分で考えろ、そう思っているのか少し呆れたような表情をして説明し、それと同時に第2王子であるグリーを強くにらんだ。
「では、私の行動にも意味はあったと?」
「ああ。連れ戻せればそれが最善ではあったが、元よりそれを期待しての事ではない。今回の事が失敗しているとしても、君の評価が下がるような事にはしないつもりだ」
「そうでしたか」
宰相の言葉を聞いてホレスは心底安心したような表情をして深く息を吐いた。
「それに、これで事の責任を誰に当てるかを決めることが出来る」
「それは誰だ。まさか……」
責任を押し付ける。それを聞いてグリーは少しだけ緊張した面持ちになった。おそらく元婚約者である自分にその責任を押し付けられる可能性が少なからずあることに気付いたのだろう。
「オグラン侯爵家に責任を取らせるつもりだ。あそこの警備なり監視の影響で逃げ出したと、この前グリー王子の婚約者であるリーシャから伺った。何処までが本当の事かはわからぬが理由としてはありだろう」
「……リーシャから?」
最近姿を見ない自分の婚約者からの情報に少しの不自然さを感じ、グリーは宰相の顔を伺った。
「報告は以上か?」
「はい、これ以上報告できることはありません」
「なら、この場は解散とする。ただし、グリー王子、其方はここに残ってください。この後重要な話をしますゆえ」
「なんだ?」
ホレスは宰相の指示に従いこの場を離れ、残るように指示されたグリーは自身だけ残ることに疑問を抱きつつもこの場に留まることにした。
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