第42話「再会に」

いつまでも終わらない抱擁に、先にしびれを切らしたのは瑠でもそして花菜でもなく第三者だった。


「――いっっっっっつまでだきついているのよぉおおおおお!!!!!」


「こ、琥珀さん!?」


「やだわぁ、私達もいるって言うのにほっとくだなんて……」


「れ、莉さんまで!?」


「うっっらやましいわ!!!そこ変われ変態!!!」


「ええ!?泉さん!?」


な、なにこのオールスターズ大集合みたいな図。とゆうか皆も来てたの?


懐かしすぎるメンツに花菜は涙するよりも先に、どうやってここに来たのかという疑問の方が強くなる。


花菜が慌てて動けない間に腰に手を回してさっきの喫茶店に向かう瑠。

その顔は清々しくいい笑顔だが、全員を無視してる。特に狐に関しては踏んずけていた。


「それ込みで話そうか、行こう花菜。」


「あ、はい。」


「……こんのクソがぁ。」


「お前本気で去勢してやろうか?」


……私は何も聞いてない。



****


「それで、どうして皆さんがここに。と言うかどうやってきたのです?」


クラシックの流れた店内はやっぱり居心地がいい。ちょうどいい感じの柔らかな椅子に腰をかけ花菜は先程の質問をする。


「俺たちがここに来たのはほんの数カ月前だ。あの時、確かに研究所は爆破されたが、他にも研究所があったらしくてな。そこで他の方法で行く方法が書かれたコレを見つけたってわけだ。」


バサりと出された書類には、確かにあの時の転移装置と同じものが書かれていた。


「そうだったんですね……」


そっか、あれ以外にも残してたのか……

花菜は夢の彼を思い出した。

彼のお陰で瑠に会えた花菜は、最後まで頭の上がらない思いで小さく感謝の言葉を零す。


「それにしても花菜ちゃん成長したわね〜。」


「うんうん、大人っぽくなったんじゃない!まだまだ幼い感じは出てるけど!」


莉と琥珀は花菜に顔を近ずけて、ニマニマする。その視線が2人とも似ていて、花菜は背中がムズ痒くなった。


「そ、そうですか?」


「なんか垢抜けしたって感じね。……あらもしかして、恋人でもできちゃった?」


莉さんの言葉に、ピシリと空気が固った。

私はそんな空気を変えようと笑って否定する。


「あはは、居ませんよ恋人なんて……」


「そうなの?でも告白とかは多かったんじゃない?」


え、莉さん私何かしましたか?

何故そこまでこの空気に油を注ごうと?


そこまで思って花菜は莉を見つめれば、莉と目が合う。

そして莉はそのままニヤリと顔を歪めて、口パクで花菜に向かって言う。


『わたしは、あのことを、まだゆるして、ないからね?』


「ひょぇ……」


あのときのってなんの事?だなんて聞かなくてもわかってしまった私はガタガタと震える。

莉さんは怒っている、そう怒っているのだ。

ニヤリと笑っているのに目は一切笑っていないどころか、闇を抱えそうな勢いである。


「あの莉さん……」


「あらァ?どうしたのかしら?震えてるけどここ寒いの?じゃあちょっと上げてくるわね。」


「あ、じゃあ私もなにか飲み物を〜……」


「え、ちょまっ。」


白々しく首を傾げた莉さんはそのまま温度でも上げに部屋を出ていく。

それ空気が悪くなったのを悟った琥珀さんも理由をつけて、部屋を後にする。

残ったのは空気を固くしたままピクリとも反応しない瑠さんと、気絶したまま爆睡している泉さんだけだ。


シーンとした気まずい空気が流れる。

花菜はもし扉がすぐ横にあったら出ていくぐらいには帰りたくなっていた。

だがここで逃げ帰れば確実に後悔するのは目に見えている。花菜は何とか自分に喝を入れて顔を上げ、瑠を見ようとした。

が、顔を上げれば瑠と見つめ合う形になって恥ずかしくなり顔を背ける。


「……」


「…………」


しまった!顔を背けながらも花菜はさっきまでの自分の喝は何だったのかと自問自答して後悔した。その間も前から強い視線を感じて上げずらい雰囲気になって手汗握る。


あれ、そもそも告白なんて自分のせいじゃないのになんでここまで緊張なんか?

と言うかそれなら瑠さんの方が絶対告白されているし、私なんかよりももっと良い人と出会っているんだろうなぁ。


花菜のその疑問は、段々と自分を責めるようなこの空気に苛立ち、そしてなんだか悲しくなってくる百面相を繰り返す。


せっかく会えたのに、どうしてこんなことに……


そんな落ちに落ち込む花菜に、瑠は優しく声をかける。


「……花菜。」


「…………」


「俺は別に怒ってないぞ。だからそんな泣きそうな顔をするな。」


「……瑠さん……」


顔を上げれば、昔と同じ優しい笑み。

少し年相応になった瑠さんはそのまま私の横に座る。


「少し、俺達には話す必要はあるみたいだな。ここ5年の話をゆっくりしないか?」


頭を撫でながら瑠さんは少し遠い目をして私を見た。でもどうしてもその目がなんだか嫌で、私は瑠さんに大胆にも抱きつく。


「……あとこれからのことも……話しましょ?」


「ああ、そうだな。話そう、沢山。」


私の背中を優しく抱きしめて笑った瑠さんのその顔は、やっぱりいつまで経っても綺麗なまま。


私はいつだって貴方に甘えっぱなしなんだ。



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大変お待たせしました。

多分あと1、2話で完結です。

最後までどうぞこの作品をよろしくお願いします!

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