第18話 「過去の元凶」
夢を見た、とてもおかしな夢。
SFチックに溢れる変な研究所にいる、とても変な夢。
そこでは色んな人が行き来してなにかに興奮しているようだった。
「――やった!やりましたよ博士!!これで亜人共に勝てます!」
「あ、ああ。そうだな。」
「これで我らの名は歴史に乗ります!全ては『落ち人』であるあなたの知識のおかげです!」
この人達は何を言ってるんだろう?……ダメだ、なんの事か分かるはずなのに分からない。頭に変なモヤがかかってるみたい。
『落ち人』についてすごく詳しかったはずなのに、全然分からないなんて。
沢山の人が一人を褒め称える、異常な程に。
褒め称えられている人は何だか曖昧な笑みを浮かべて笑う。
――僕してる事は、正しいのかな?
ふと、誰かの声が聞こえた。それはさっき聞いた『博士』と言われてた人の声によく似ていて、そして苦悩するかのような声だ。
ん?なんだろうコレ?私とうとうテレパシー使いになっちゃたのかな?
――僕はただ、自分の趣味を作りたかっただけなのに!!!
そう言って目に前にあるのは何だかごつい兵器。すごく見覚えのある国民的あれだ。
いやそれダメじゃない?何そんな苦しそうな声出して1番作っちゃいけないやつ作ってんだよ。
どう考えても兵器じゃねーか。
――それに乗って「俺、いっきまーす!」やりたかっただけなんだよ!
ただの私利私欲じゃないかーい。あの有名なセリフ言いたいがために作ったの?執念強すぎでしょ。とゆうかそんな技術力あるなら他に使ってよ!特に世界平和に!
あとそれパッと見似てるけど全然似てねーって言うか似てんの色だけじゃねーか!
んん?あれ何だかって、あ、思い出した。これ私が遭遇した機体じゃん。
じゃもしかして、あの馬鹿っぽいし性格の悪いあの兵器をこの人が作ったってこと?
でもなんでいきなりこんな夢を?と言うか夢なのかな、あの機体にあったからこんなことになってんのかな。それにちょっとだけだけどあの世界でのことも忘れちゃってたし。
人や書類を触ったり見たりするが全て通り抜けてしまう。うん、夢だな。しかもあの機体の夢かも、ファンタジー過ぎるけど。
「……なあ、君はこれについてどう思う?間違っていると思うか?」
「え、?」
――こっちを、見てる?さっきまで見えてないみたいな反応してたのに。
え、ここは夢にはずって言うか過去のお話じゃないの?なにこれ怖い。
「ああ、安心してくれここは確かに君の夢だ。」
「……なぜ私を?」
「だって、君も僕と同じ落ち人だろう。」
パキッと世界が崩れ、見渡せば全く違う場面に変わり、とても厳かな雰囲気のある部屋に座っていた。何だか現代の会議室、ていゆう感じ。
「こ、ここは?」
「ここは僕がこの世界で最初に落ちたところだ。ここで色々話したなぁ。しかも僕後ちょっとで銃殺される所だったし。」
「え、こわ。」
「まあ、急に現れたから仕方ないけどさ、でもいきなり過ぎだよなぁ。」
「……それで、どうしてこんなところに呼び出したりなんか?」
「……なんの事?」
「惚けないでください。ここは私の夢じゃなくあなたの夢でしょう?まあ、詳しく言うならあなたの残留思念、と言った方がいいですね。」
騙されてくれると思われてただなんて心外だ。これでも私は軍人の莉さんにお墨付きを貰ってるんだから、さすがにここまでの違和感だって分かる。
「どうしてそう思ったの?」
「先程で見た研究所にある書類です。あんなに書いてあって専門の知識のあるものなんて私は知りませんし、私の夢にしては色々と鮮明すぎる。例えば、あなたの表情とか感情とかね。」
「……アハハ!なるほどなるほど、全く君はどこの名探偵だ?全くもってその通り、と言いたい所だけど少し違う。ここは一応君の夢だよ。」
謎の、いや同郷の男は腹を抱えて笑った。どこがおかしいんだ?
でもここが私の夢?となるとコレは追憶ってことになるのかな?
「そうそうここは一応君の夢。そしてここは確かに僕の過去と言うより記憶で、今寝ている君に見せている残留思念でもあっているよ。」
「何故これをあなたは見せてくるんですか?私に何を?」
同郷の男は椅子に座り、真剣な顔で見てくる。
先程まで馬鹿なことをしていた男とは思えないな。
「君はさ、この世界の僕からしたらの未来で、なにが起きているかわかっているんでしょ?」
「はい。その代わりこの世界で起きた過去のことは分かりませんが、あの兵器を作った張本人があなただという事は分かります。」
「うん。あれを作った、というよりあれの案を出しそして責任者になっているのが僕。そして僕はどうしても聞きたいんだ、君がどう思っているかを。
――僕はどこで間違えてしまったんだろうか?この兵器を作ったら、きっと僕のせいで多くの人が死んでしまう。でもこれを作らなくっちゃ僕が死んでしまう。僕はどうすれば良かったと思う?」
今なお、あの世界を昔の戦争で残った兵器で苦しませている過去の元凶は、歪な笑みを浮かべた。
まるで『間違っている』と言ってほしそうな笑みで。
私がどう思っているかって?そんなの。
「……分かりませんよ、そんなこと。」
「え?」
「だいたいそんなこと私に聞かないでください。私だっていっぱい間違っていることしてるのに、あなただけ責められませんよ。
……それに私があなたの立場ならきっと同じことをしてたと思います。それか何も出来ず殺されちゃってたかも。
でもだからといってあなたが正しいとも思っていないですよ。でも間違ってもいない。まあ、結局やらかしたと思っているなら仕方ないので、あなたは開き直ってドンッと構えてればいいんですよ。もうどうしようもないことですから。」
私が言い切れば男は少し考えた顔をしていた。
さすがに無責任すぎたかな?でも本当に仕方ないことだもん。きっとこの人は板挟み状態だったんだろうな。
「……そうか、そうだよな。仕方ないし、もう何も出来ないのにいつまでもウジウジしてちゃダメだよな。だって僕もう死んじゃってるし。」
「そうですよ、ちょっと考えすぎです。」
「ああ、ありがとう君と話してよかった。おかげで覚悟が決まった。」
男はとても爽やかな笑みを浮かべた。どうやら付き物は取れたらしく、覚悟が決まったようだ。
「そうでしたか。それは良かったです。」
「うん。だから僕の同郷で僕の悩みを晴らしてくれた君に最後に、いいものをあげる。」
そう言えば何だか眠くなり始めた。あれ?ここは夢なの眠くなるなんて可笑しくないか?疑問を持つが段々と男が霞んできて――
そしてあの男に声が耳元で静かに聞こえて言う。
「どっちを選ぶか、それは君次第だよ?
でも後悔のないように。それは君の運命なんだからね。」
手に何かを握らされて、私の意識はそこで途切れた。
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