第16話「フラグ回収」

「ここで今日は休もう。明日は日が出て直ぐに出発だ。」


「そうですか……」


あの後マジで7時間歩かされました。足の感覚なくなりそう。もう気力が無い、泉さんの時よりもない。


「今日はよく頑張ったな、もう休め。」


「そうですね……」


あ、なんか頭がぼうっとしてきた。眠い。

瑠さんが火をおこして寝袋を用意してくれたのでお言葉に甘えてもう寝よう。


寝袋に入ってしばらくもしない内に段々と意識が消えていく。気絶するように眠ろうとした瞬間――


森の奥から轟音が鳴り響いた。


「ッッ今の音は一体!?」


目が覚めるほどの轟音って、一体何が。


「花菜!今すぐここから全力で逃げるぞ!!」


瑠さんに言われた通りに荷物を全て置いて、言われた方角に沿って全力で逃げる。後ろからは機械音が鳴り響き、私は嫌な予感が頭をよぎった。


ああ〜もう、疲れているって言うのにここで回収しちゃうのか!早いんだよ!


「瑠さんって案外運悪いですよね!?」


「運が悪いのは花菜の方だろう!」


なわけない!だって瑠さんが言ってたった7時間後だぞ!?運が悪いって言うよりフラグ建築士の才能があるよ絶対!


「今度から迂闊な発言は控えてください!この1級フラグ建築士!!」


「何言ってるんだ!?」


全力で山の中を逃げるが、機械音はずっと後ろで鳴り響いている。完全にロックオンされているってことは……


「まさか対神族用機械兵器ってこと!?」


「その可能性が高い。花菜!お前はこのまま逃げろ、俺が相手をする!」


「なっ!?無茶です!瑠さん自分で言ってたじゃないですか、1人じゃ勝てないって!」


やばい、だんだん息が苦しくなってきた。やっぱり体力増えた方だよ絶対に。前だったら既に息がたえだえになってたもん。


「だがこのまま逃げていても仕方がない。それに一体だけなら勝算がある。」


瑠さんは体を返し刀を抜き、炎が渦のようになって瑠さんの体を纏った。

いや、だからフラグを立てんなって!それに機械相手に刀が通用するかぁ!!


「やっぱり、絶対に無理ですって!!瑠さん逃げましょう!」


「いいから行け、後で俺も追いつくから。」


「いや、それもう死亡フラグ発言なんですが??」


もうダメだこの人、このままじゃ多分だけどこれ勝てない。理由はさっきのセリフ。


「――ああっっ!!もう、仕方ないなぁ!」


私も足を止め引き返す。瑠さんは驚いた目をして私に叫ぶ。


「花菜、何を!」


「瑠さんは機械についてそこまで詳しくなんてないでしょう?私もですが瑠さんよりも絶対に詳しいです。だから私が弱点を教えていきますので、そこを重点的に攻撃してください。」


「いや、しかし――」


「私は多分ですが大丈夫です!」


「根拠がないだろう!花菜はいいから早く」


「根拠ならあります。1つは今追ってきている兵器が対神族用の物と、もう1つはこれがとゆうことです。もしこの根拠が合っていたなら、機械は私を狙いません!」


そしてここまで根拠を立てて置きながら、絶対安全と言えない理由は、私が。もしこの世界の人しか機械が攻撃対象外として機能しないなら、私も瑠さんも共倒れになってしまう。

しかし、瑠さんだけが倒れても私はこの先で生きていくなんて不可能。結局私には逃げるなんて選択肢はない。


「足でまといですが、瑠さん1人で戦うよりかは勝算があります!瑠さんは私を守らずに攻撃のみに専念してください!」


「――チッ、わかった。危険だと思ったらすぐに避難、これだけは約束しろ。」


「はい、約束します。……来ましたね。」


木々を薙ぎ倒し、土煙をあげて飛び出すわボロボロで錆び付いた、まるで国民的人気のガンダ○とよく似た兵器だった。


「え、ガンダ○じゃん。これ私のところの知識入ってるよ絶対。」


しかしそんなガンダ○でも一点だけ、元の世界とは違うところがあった。


そう、まるでここが弱点だと言わんばかりにある、なんか重要そうな部品が頭部に剥き出してあった。


その時私が思ったのは――これ考えた人も、ここが弱点だなんて気づかなかった人も絶対バカでしょ――とゆうことだった。


「瑠さん、私の見立てでは弱点はあの頭部に剥き出してある部品です。動きは多分ですが錆び付いているおかげで遅いと思います。飛び道具に気をつけてください。」


むしろ、大昔に作られたのにまだ残ってるって馬鹿だけどすごいな。馬鹿だけど。


「なるほどわかった。とりあえず花菜は隠れとけ。俺はさっさとデカブツを倒す。」


「はい頑張ってください。」


そう言って私はすぐ様岩陰に身を隠し、瑠さんの戦い方を観察する。


瑠さん戦い方はとても洗礼されていた。刀に青い炎を纏わせ、攻撃される前に機体の四肢を切っていく。機会からの攻撃は今のところないか。

確かに青い炎は赤い炎よりも高温のはず、これなら切れるかもしれんない。


しかし、私は違和感を抱いた。こんなに早く倒せるのなら何故ここまでこの兵器は残ったまんまなのか、と。

それならば既に大昔に全て壊されてもおかしくないはずだし、自然に機体は錆びて使えなくなっているはずだと。深読みかもしれないけどどうしても拭えないこの不安。


考えているうちに、段々と嫌な考えが頭を過る。まさか、機体の四肢を攻撃されているのは錆び付いた関節を熱で錆取りするためで、わざと攻撃させてるのでは――


「ッッ!?瑠さん!!逃げて!!!」


「花菜?」


「そいつの目的は、瑠さんからもらう炎です!今すぐ逃げて!!!」


だが、機械の方が反応が早く、とかされた四肢は光沢を放ち錆は一切なかった。

くっそ!酸化しないのかよ!これ作ったやつは馬鹿なんじゃない、性悪だ!!!


機械は何か光線の出た剣を背中から取り出し瑠さんに振り上げ、そして切りかかろうとして――


「瑠さん!!!!」


瑠さんを庇うように出た私の頭の直前で止まった。

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