第3話 「ここから始まる」

花菜は心の中でありとあらゆる語彙で神を罵倒することに集中していたために、男の様子に全く気づかなかった。

じっと花菜を見つめる男は少し考えそして、何かを決意した表情で花菜に話しかける。


「お前さえ良ければ、俺と一緒に来るか?俺は傭兵だから守ることは出来るし、お前も知らない土地は不安だろう?」


「そ、そうですが。」


「それに、俺は1度落ち人に会ったことがあるが、そいつは元の場所に帰る方法を研究しているそうだぞ?まあ、お前が戻りたいのなら、だけどな。」


その言葉は、花菜にとってあまりにも衝撃的でそして素晴らしい神の提示のように感じた。そうか、神は本当はここにいたんだな。と感じるぐらいには、花菜は男に感謝していた。


しかし、しかしだ。

花菜にとってこの男は少し親切な不審者に過ぎない。

だがそれは仕方がない、だってこの男とあって1時間たったかどうかぐらいだ。

それに花菜はこの男の名前も何もかも知らない。そんな男について行っていいのだろうか?そんな思いが花菜の中に渦巻いていた。


「え、いやでもご迷惑じゃ?」


「特に迷惑はしない。それにここでお前一人にするのは寝覚めが悪い。」


男は優しげな瞳で花菜を見つめる。

そこには特に何かしようという訳でもなく。ただ心配しているお父さん的な感情がにじみでていたのを花菜は見逃さなかった。


なるほど、この男信用出来る!

なんて考えていたが、実際花菜はこの男について行くしか他はなかった。何故ならここは異世界。

何の身寄りもなく、知識は赤ん坊レベルの花菜でこの世界で生きられないのは自分でも目に見えていた。


「じゃあ、その人の場所までで。お荷物ですがよろしくお願いします。」


「ああ、よろしく。」


まあ、足でまといにならないように気をつけないとね。


花菜は覚悟を決めて、男の後をついて行った。




「そういや、名前聞き忘れてた。」








****


「あの、聞いてなかったんですが貴方のお名前はなんと?」


「俺はりゅう。お前は?」


「私は花菜って言います。これからどうするんですか?」


「これからお前の度の準備をしなくちゃいけない。だからまずは、その髪を隠さなければな。」


はて?なぜ髪を隠さなければ?


「ここでは黒目黒髪はほとんど存在しないと言っても過言ではない。 だからそう言う珍しい色合いは高値で取引されてしまう。」


なるほど〜。え、じゃあ、もし私瑠さんに助けてもらわなかったらやばかったってことなんじゃ?


「それに花菜ぐらいのくらいの子供は攫われやすい。」


「そうなんですn、今なんと?」


「?だから花菜ぐらいのは誘拐されやすいから、俺の傍からあまり離れるなよ。」


ほーう?私ぐらいのー?が誘拐されやすいと。なるほどなるほど。つまり瑠さんがこんなに優しいのは、私が....


前を進んだ瑠は、来ない花菜を訝しんで手を伸ばしたその瞬間。


「――誰が、誰が小さな子供だ!!!目ん玉ついてんのか、このドアホがーーーーー!!!!!!」


「グッフッッ!!」


腹に強烈な蹴りをくらい、腹を抑えて撃沈したのだった。




前途多難である。

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