第2話「謎のイケメン」
「......へ?」
間抜けな私の声が、静寂な小道に響く。
「こ、ここはどこ?私は誰?」
人生一度は言ってみたい台詞ランキング第3位の言葉が、私の口から漏れ出る。ちなみに第1位は「知らない天井だ。」である。
よし落ち着け私、まだ気絶するときではない。だから足の震えを止めるんだ。
そもそも一体何がどうなったらこんなことになる?
いや確かに、確かに私は何か面白いことが起きないかと思っていた。
だからといって、まじで意味の分からんことに私を貶めろとは言っていない。
やはり神は性格が悪いのか、運命が非情すぎるのかもしれないと思った。
しかしそんなことを考えたところで状況は一変することはなく、暑くなるここに嫌気がさす。
額から出る汗をタオルで拭き、後ろを見てみるがそこは最初っから道はないとでも言うかのように冷たい壁がある。
息を吐いて落ち着きを取り戻した私は、取り合えず状況を整理して、それからどうするかを考えることにした。
取り敢えず状況整理のために荷物を漁れば生徒手帳が落ちて名前が顕になる。
名前の欄には私の名前、
――高等学校 2年A組 17歳 女子。
と書かれた生徒手帳を拾い上げてカバンの奥に押し入れる。
誰が自分の顔を見たいものか。
そういえば生徒手帳の写真って微妙な顔で好きになれないが、他の人はどうなんだろうか?
とまあ、余計なことも考えいたが、あの風が起きた後をよく思い出すようにしても私には一体何が起きたのかがわからず途方に暮れた。
真っ青な空に白い入道雲が通り過ぎる。
蝉の居ないが、この暑さだやっぱりここも夏なのだろう。夏らしい音が聞こえず、少し物悲しさを感じた。
肩を落として、周りを見ていれば自分の背後から、ザッと地面を擦った足音がなる。後ろを振り返えれば時代劇の旅人みたいな格好をした男が、そこに居た。
「......」
男は黙ったまま私に目をやる。私も疑問ながらも男を見たため、傍から見れば見つめあっているように見えてしまう。男の金髪に近い茶色の髪がにキラキラと光に反射し、無表情な顔に映えるような美しく輝く青い瞳がじっと私を捉え続けた。
え? なに? なんでこの人何も言わないの? とゆうかすっごいイケメンだな。俳優さんか? でもめっちゃ見てくるじゃん。めっちゃ気まずい。
「あ、あの」
「お前、人族か?」
「……へ?」
気まずくなって話し掛けた私の声と重なるように、低く美しい声が耳に届く。男の表情はピクリとも動いてないはずなのに、なんだか声と雰囲気で困惑しているように私は感じた。
「え? は、はい人族?ですけど?」
何を当然のことを? と言うか人族って何?と思いながら答えれば。男は少し目を見開き驚いた様子を見せた。
「……そうか、お前はどこから来た?」
「それが、いつの間にかここにいて。ここが何処か私も分からないんです。」
質問責めする男を不審に思いながらもついつい質問に答える私。
仕方がない、だってイケメンに質問されたら私はスリーサイズまでは答えないが他は答えてしまいそうなんだもん。イケメンはお得なのだ。
そんなこと馬鹿な事を考えていれば、男はふと考えるように目を伏せる。
私は呑気にこの人まつ毛長いなーと考えていた。とゆうか現実みがあまりにもなく、ありえないことが多すぎて私は現実逃避してしまっていたのだ。
当たり前だ、だっていきなりこんなところに飛ばされ、おかしなことに巻き込まれれば現実逃避のひとつやふたつはしたくなると言うものだ。
現実逃避中の私に男は静かに言葉を発した。
「お前は、そうか。落ち人なんだな。」
足長ー、めっちゃスラッとしてるー。なんて考えていた私の耳に、とても気になる情報が届く。
「あの、落ち人って? 何か知っているんですか? 」
私は男に詰めるように話しかける。詰め寄りすぎて迫っているような感じだが焦っている私には今は距離感など考えていられなかった。
「落ち着け、ちゃんと話す。」
男はびっくりしたように私の肩を軽く押し離れさせる。私は今更ながら男との距離が近いことに顔を熱くさした。
きっと男から見たら、私はすごく顔を赤くしていることだろう。少し雰囲気が柔らかくなっていた。
「落ち人は、簡単に言えば別の世界から落ちてきた人のことを言う。普通は世界と世界の境界線が朧になった時だけ起こるのだが、人が落ちることは滅多にない。」
「世界から....落ちてきた?境界線って?」
what?どゆうこと?ちょっとまって世界から落ちてきたってなに?いやいや、たとえイケメンに言われたからって私が何でも信じると思うなよ!そこまでチョロくないわ、多分!
困惑を極めた私は男の言われた言葉の処理ができず目を回す。そんな様子を知ってか知らずか話を進める男。
と言うかこの人絶対空気が読めないと思う。
「それと気をつけた方がいい。お前のところではどうだったか知らないが、この世界は人は絶滅したのだから。」
――え?
人が絶滅しただと?
「それって、どう言うことですか?」
自分でも声が震えているのがわかる。いつも図太いだなんて言われている私ですら動揺が抑えきれなかった。
「大昔のことだ――」
****
太古の昔、この世界には4つの種族がいた。
繁殖力が強く発明力のある種族〖人族〗
怪力な力と
獣の特徴を持ち身体力のある種族〖獣人族〗
神通力を持つ種族〖神族〗
4つの種族はお互いにお互いを傷つけず、領地を侵さないことを条件とし、日々の安寧に勤しんでいた。
しかし......
ある日、人族は自身が持つ発明力により世界をも揺るがす世界大戦を開戦してしまった。
その時代の人族の発明力はどの時代においても類まれなる神の御業とまで評されている。
他の種族もそれに応戦をしたはいいものの、人の力の根幹である化学力には到底及ばず苦戦を強いられていた。
そこで人族を抜いた3種族は同盟を組み、人族に勝たんとする〘3種同盟〙を作り上げた。
さすがの人族も、力を合わせた3種同盟には勝てず次々と敗戦の狼煙を上げていき、とうとう人族は3分の1ほどの数をこの戦いで減らしていった。
その後3種族の長たちは人族をどうするか悩み、そして決意した。
――もう二度と、愚かな戦いを仕掛けぬように人族を滅ぼそう。
そうして3種族の決定により、残りの3分の1の人族は長い時間をかけて1人残らず滅ぼされてしまった。
だが、人族が滅んだその後も遺物として残ってる武器や兵器は依然として残っており、その強大すぎる力は被害が出る度に大きな傷跡を残していった。
しかし人族が滅んだ為、その対処法もわからず今もその兵器たちは多くの種族を襲っている。
****
「これがこの世界で起きた出来事だ。だから人族と同じである落ち人を忌み嫌うものも1部いる、と言っても大昔すぎて落ち人とは関係ないと割り切る方が多い。だが事実、もうこの世界には人はいない。お前たち落ち人以外は。」
私は、この話を聞いて目の前が真っ暗になる思いがした。
だってそうでしょう? この世界ではある意味私のような特殊な人以外はもう居ないのだから。
この人の話を信じるのであれば、もしかしたら私すごくヤバいのではないだろうか?だってこんな身寄りのない、しかもこの世界では人が居ない。そんな世界で私はどうやって生きていけばいいのだろうか?
「わ、私はこれからどうすれば....?」
未来への絶望ち恐ろしさの他に、あまりの状況で出てく感情。
それを私は心の中で呟く。
おお、神様。もし今見ているのなら言わせてください。
――なんて世界に迷い込ませたんだコノヤロウ!!!!!禿げてしまえ!!!!
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