第1話「不思議な小道 」

「あっっつーい!」


陽炎がたちこめた学校の帰り道、私は大き声でそんなことを叫びながらグッと背筋を伸ばした。


「なんて暑さよ。干からびるかスライムにでもなってしまいそう。」


じわじわと肌を焼く太陽と、ムワッとくる湿気に汗をびっしょりとかくのを感じながら私は鬱陶しげな顔でおでこに張り付いた前髪をかく。


ミーンミーンとセミが大きい声で歌い、夏を主張している中でチリンチリンと風鈴の涼やかな音が聞こえた。


「あー暑っつい、とにかく暑っつい。とゆうか段々と暑くなってきてない?このままでは私は本当に死んでしまう。」


近年で騒がれる地球温暖化を恨めしく思い、近くある小石を思いっきり蹴る。


学校の帰り道の小道で、石の転がる音が響く。しかしそんな小さな音はすぐに夏の音でかき消された。

一人寂しく家までの帰り道を歩く。

残念ながら私の友人は帰り道が違うため先程別れてしまった。

だから一人で帰っていても理由があるのでボッチとかではない。消してない。


誰に言い訳してるか分からない自分に苦笑しながら歩いていると、昔からある古風溢れる小道の曲がり角を見つけた。ここはなんだか自分のに酷く擽る道で、すごく馬鹿な真似をしたくなってしまう。そう、まるで男子中学生が八割は掛かってしまうあの病気に。


このままこの道を進めば、絶対にバケモノ何とか世界に行くか、なにかに巻き込まれるんではないか?


少しでもそう思ってしまえば進んでしまうのが人の性。

行ってみるっきゃない!と進むが、この道は多く進んできたがそんなことは起きたことがない。そしてそんなこと思った回数は既に3桁越えである。童心を忘れないにしても多すぎる。


――あの時引き返していたら、私は多分今もこんなこと思っていたのかなと考えない日はない。


小道に足を踏み入れる私にぶわっと、強い風邪がふきつける。あまりの強さに私は目を閉じた。


おぉう、すごい風だな。突風かな?


呑気な私を他所に、風が吹いたあとは酷い静寂が私を包んだ。


可笑しいと、私は冷や汗を少しかく。

だってさっきまではあんなにセミの鳴き声が聞こえたのに、今はなんの音もないとか。


なんだか目を開けずらかった。

だってなんかとんでもない事に巻き込まれたのでは?と私の警報が頭の中で鳴り響いているのを感じた。

だが何時までも目を瞑っている訳には行かないと、意を決して目を開ければそこは――


――あの小道に似ても似つかない、私の知らない道の上に私は居たのだった。

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