白の国へ

白の国へ




 こんな風に伝えることになってもてごめんな。直接伝えるべきか迷ったんやけどこうして手紙でしか伝えられへん臆病者なんや。






 本題から言うとオレは赤の国に戻ることにした。






 みんなが知っとる通りオレの出身国は赤の国や。やからと言って白の国が嫌になったから出ていくってわけやない。今まで年齢についていってこんかったんやけど、実はなんとなく目安はついとる。総長ややこしいかららいなにするなは現在23歳。そしてオレが拾われたのが彼女が5歳のときだったらしいから少なくとも18歳。らいなが見た感じオレは1歳に行くか行かへんかくらいで、捨てられたばっかでアジトの前に置いてあったらしい。やから大体19、20歳くらい。




 ここに来たのが3年前。




 猫かんにも伝えたんやけど、オレは赤と白の国のハーフ。いう勇気がなくて今まで隠していて本当にごめん。




 赤の国では瞳の色が変えられへんからいいように思われへんかった。




 物語みたいに化け物にも優しい人がたくさんいるわけでもなく、らいなしか話すこともできないままで彼女もオレと話しているうちに周囲の目が厳しくなり総長という立場でハーフと話していると肩身が狭くなってしまっているのを感じていた。だから、いつも一人で過ごしていた。




 役に立たないハーフなんておいている意味がないというのに、魔法も使えないし使ってもらうこともできない身体。




 3歳ぐらいから、戦うために短い剣を握った。毎日毎日振って振って、練習を重ねていた。そして、10歳を超えて初戦で敵の総長を打ち取った。戦闘幹部も持たせてもらって、ひたすら練習を重ねとった。それでも寝ている間に剣を折られたり、ものを壊されたり、着替えているところを盗撮されたり、汚物に・・・とにかくいろいろされてきた。




 らいなにも心配をたくさんかけてしまった。




 そんな風に偏見の目を向けられた結果、突然目の周囲を刺されて今まで使ってた剣を握れんくなってもた。猫かんが戦ってほしいって思ってくれとったんは伝わっとったんやけど、そういうことがあったんや。




 この事件を受けてらいなは白の国の人から毟った髪を集めたものをオレに渡してくるみに預けた。






 伝言で分かったんやけど、「器の準備がそろった」・・瞳の色を変える方法が分かったんや。








 赤の国の見た目になるかどうかは分からない。白の国に受け入れられて、くるみたちへの感謝の気持ちもたくさんある。どちらかを選ぶべきなのかわからなくなっているんやけど、散々な目に遭ってきたけれど赤の国でやり残したこととか、らいなへの恩が残っとる。






 ハーフのままでっていうのが正しいはずやねん。この見た目を気に入っていると主人公やったらいうはずや。他人から受けるものなんて慣れたけれど、やっぱり身内に嫌われるのがこわい。








 司令官失格やな。






 受け継ぎとかのファイルはまとめとる。良かったら役立ててほしい。










 本当に、ごめんなさい。










                                           ナル












久遠へ




 努力家で、今までで一番支えられてきたな。人見知りやしこの国を大事にしとる久遠がオレみたいな正体不明の相手に対して指令もきちんと聞いてくれて、最初のほうは今の奏多に対してしとるみたいな嫌がらせもしてきとったけど、徐々に受け入れてくれてほんまにうれしかった。久遠みたいな存在がいないと引き締まらんし、奏多のことも見てあげてな。




 多分そうやろなって思とったから言わんかったけど、オレの正体うすうす気づいとったよな。ハーフってわかんなかったからかもしれへん。それでも嬉しかった。確定はしていないとしてもわかっていて会話をしてくれとんやから。




 らいなの護衛も、アジトの護衛も、努力家なところからの士気の上げ方だったり久遠がおらんかったらなりたたん。




 オレがいれば久遠の努力を活かしたるっていってたのに、ごめん。




 安定した実力を信頼しとる。これからも引っ張っていってほしい。








猫かんへ




 生まれたときの名前が分からなくて、親もわからず、猫族っていう部族自体が珍しいうえに実力のせいで孤立しているところが似ているけれど、真逆やったな。




 誰よりも優しくて、強くて、でも魔法以外のことは上手にできないことを恥じずに得意の魔法でカバーしているプラス思考なところが魅力だな。




 ずっと言おうと思っていたけど、急にフッてごめん。それなのにずっと慕ってついてきてくれたところに何様だよって話やけど、本当に支えられて安心した。自分がハーフっていうのを隠している罪悪感もあって、司令官として猫かんといるべきではないと判断したんや。




 猫かんはオレがいなくなったことを自分のせいって思うやろしタイミングが悪かったのもある。確実に言えることは猫かんのせいとかはない。




 猫かんの強さには、言うまでもないけど助けられているし、なによりもオレに笑顔を向けてくれたりいい思い出をくれたことは一生忘れへん。








くるみへ




 ハーフってわかっているオレを受け入れてくれてありがとう。東城家は兄弟間でも髪の色が違うから色に寛容とは言っても、対等に接することが出来てよかった。




 本当に、本当に、いつもありがとう。




 誤解されることも多いやろうけど、大丈夫。説得力ないやろうけど、誤解とか偏見とか、そんなのはわかる人にわかってもらえばええしわかってくれんかったら逃げたりそいつを消してしまえばええ。それくらいの力はあるやろ。




 この状態でくるみを置いていくことのリスクは大きいと理解しとる。




 きっと苦しんだり悲しんだりしてくれるやろな。






 でも、これは何回も何回も何回も、何百回も考えた結果、これしかないって判断した。許してはくれへんやろうけど、約束を忘れたわけやない。それは、約束する。約束の約束。












奏多へ




 あんたがいちばん不思議な存在やしハーフってこと知っても気にせんかったのは意味が分からんし気分屋で好き嫌いが激しいらいなから好かれたっていうのも聞いた。あんたなら何かしでかしてくれるんやろかって思って、戦える状態になってから出ることにした。




 オレのハーフの特性を利用して戦うことは出来ひんのに、いいだせんくてごめん。




 男友だちあこがれていたから話せてよかった。




 ありがとう




 










 本当に、みんなありがとう。ごめん。


















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