第50話 どう責任取ってくれるわけ?

 十五分程して、リムが目を覚ました。


「……ふみゅぅ……もうみゅりぃ……」

「……第一声がそれか。リム、正気に戻った?」

「……にゃ? んみゅ?」

「リム。俺だ。わかるか?」


 リムはしばしぼんやりとしていたが、何度か声をかけるとようやくまともな言葉を発してくれた。


「……え? 武?」


 リムが軽く振り返り、俺の顔を見て不思議そうな顔をする。


「あれ? ここ、どこ? ホテル? え……な、なんであたし上半身裸!? しかも、下半身がめっちゃ……っ」


 困惑するリムを、俺はしっかりと抱きしめる。


「良かった……。リム、正気に戻ってくれて……」


 思わず涙がこぼれてしまう。リムがもう戻ってこないなんて心配まではしていなかった。しかし、ちゃんと戻ってきてくれたことはやはり嬉しくてしょうがなかった。


「武……? どうしたの、そんな泣いちゃって……。ってか、あたし、どうしたんだっけ? なんでホテルに? なんで記憶が飛んでるんだっけ?」


 混乱の極みにあるリムに、俺はこれまでの経緯をざっと説明した。


「……そっか。皆には感謝だね。命まで救われちゃったら……もう、あたしも許すしか……。いや、それは今はいいや。

 それより、あたしが不用意にあいつに話しかけたせいで、あたしも、武も、すごく危険な状況に追い込んじゃったんだ……。ごめん、武。本当にごめん……」

「いいんだ。気にしないでくれ。リムが無事なら、俺はそれでいい……」

「良くないよ! 何言ってんの! あたしは、あたしだけ無事じゃ嫌。武だってちゃんと無事じゃないと、あたしは一生後悔する。あたしは、武がいない人生なんてもう無理だから」

「そっか……。ありがとう。その気持ち、すごく嬉しい。リムがそう言ってくれるなら、俺も自分のこと、もっと大事にするよ」

「うん。そうして。あたしたち、もう二人で一つ。あたしはそう思ってる」

「うん……。わかった」


 俺がリムを抱きしめて、リムも俺の手をきゅっと握る。

 どこか満たされた時間が少し過ぎて。


「……ところで、武」

「どうした?」

「あんた……あたしに、『開月』っていうの、使ったんだってね?」

「うん。ごめん。正気に戻すために……」

「……たぶん、そのせい。今、あたし、未だにムラムラしてしょうがないんだけど? どう責任取ってくれるわけ?」

「へ? いや、ご、ごめん。その効果を打ち消す技もちゃんとあるんだけど、もう俺も疲れ切ってるから、今からするのは難しくて……」

「そういう話じゃなくて!」

「え? じゃ、じゃあ、どういう話?」

「もう! 武は本当に言わないとわからない奴なんだから!」


 リムが振り返り、俺をベッドの上に押し倒す。

 俺に覆い被さるリムは……ギラギラした猛獣の目で俺を見つめていた。


「……いつもはあたしがしてあげるだけだけど、今回はそれだけじゃ無理。ちゃんとあたしにも奉仕してもらう。ただし……挿入はなしね。そこまでするつもりはない」

「お、おう……」

「ちなみに、この部屋の中にはまだ回復薬が四本残ってる。……たくさんできるから、今日は我慢なんてしないでいいよ?」

「……そ、そう、か」

「じゃあ……武ももう準備できてるみたいだし、始めから思い切り、ね?」


 リムが少し乱暴に俺の服を脱がす。ここまで情欲に濡れるリムなんて初めてだが……これは俺の責任。その全てをきちんと受け止めよう。

 時間も忘れ、双山さんたちが待っているだろうことも忘れて。

 俺とリムは、それからしばし、ひたすらお互いを求め合う時間を過ごした。

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