第49話 大丈夫だよね?(警告が来ないことを祈る)

 リムをベッドに座らせて、背後に回る。そして、ぎゅっとその体を抱きしめた。

 先ほど、あの青年がリムの体に触れたことは心底不快だった。リムは自分のもの……とまでは思っていないが、リムの同意なしで誰かが触れるのは許せない。


「ごめんな。俺、本当に無力で……」


 リムの返事はない。今回は双山さんたちの活躍で助かったが、本当に危なかった。大切なリムを守れず、俺自身も殺されていたかもしれないのだ。

 ジョブやスキルが当たり前にある世界を、俺はまだまだ甘く見ていたようだ。


「リム……声をかけただけじゃ、まだ目を覚まさないんだよな?」


 何度も名前を呼んでみる。だが、やはりそれだけではどうしても正気に戻ってくれない。


「それなら、双山さんがアドバイスしてくれたことだし……」


 俺のスキルで、リムの正気を取り戻す。

 俺のスキルにそんな効果のあるものはないが、とにかくなんでも試してみる。

 まずは、リムの上半身を脱がす。同意なく脱がしてしまうのは気が引けるが、この状況ならリムも責めはしないだろう。ただ、肝心な部分は見ないように気をつけておく。


「まずは……いつもの感じでやってみるか。スキル『おっぱい矯正』。技の一、『望月』」


 オーラを纏う手で、リムの両の乳房を鷲掴み。当初はまだおっぱいと称するにはいささか抵抗を覚える膨らみだったのだけれど、今ではまごうことなきおっぱいである。ぷにっと柔らかくて心地良い。

 まずは膨らみを揉みほぐしながらオーラを練り込んだ。

 丹念に丁寧にほぐしていくと、矯正には手応えがあるのだが……。


「……本当に、意識がないんだなぁ」


 いつもなら、この段階で何かしらの反応がある。呼吸が荒くなったり、発汗が促進されたり。しかし、今のリムは全くの無反応。俺に触れられていることさえ気づいていない様子。

 こんな、人形みたいな姿を見ることになるなんて。

 自分の無力さが心底嫌になる。

 俺の力ではまた救えなかったのだと、悔しい気持ちが溢れてくる。


「リム……戻ってきてくれっ」


 リムを脅威から救うことはできなかった。その事実はもう変えられない。せめて、リムを正気に戻すところは俺の手で叶えたい。

 俺の願い虚しく、どれだけ揉んでもこねても摘まんでもリムからの反応はない。『望月』ではダメなようだ。


「うーん……これでダメなら、他は何がある?」


 余計な効果を持たせるとリムの体に良くない。小さくする技はもちろんダメだし、子供を産んでないのに母乳が出るようにするのも困ったことになりそう。疲労回復効果もあるマッサージをするか……。


「あとは、乳首の感度をよくするあれとか……?」


 いやいやいや。あんなエロスキルを勝手にリムに施すわけには……。まぁ、感度を良くすることもできれば、鈍くすることもできるわけで、正気に戻った後には元に戻してあげればいい話ではある。それに、一度施術しただけでは、恒常的な変化にはならない。


「仕方ない。やってみよう。……技の十、『開月』」


 再び俺の手をオーラが覆う。一度『望月』を使っているから、リムの体は既に準備万端。始めから全力でいかせてもらう!

 リムのおっぱいを両手で鷲掴み。いや、正直言うと鷲掴みする程の大きさは……いや、それは重要ではない。俺は手のひらでリムのおっぱいを覆い、全快でオーラを流し込む。

 まだ変化はない。これではダメなのだろうか。いや、諦めるな。俺は双山さんを信じる。

 技の特性として、全体を揉みあげるのではなく、先端部分を重点的に攻める。親指、人差し指、中指にオーラを集中させ、優しく丁寧に摘まむ。


「あっ」


 リムの体が一瞬震えた。今まで無反応だったことを考えれば、これは大きな一歩だ。いける!

 リムの正気を取り戻すため、俺は何度も何度もリムの先端部分を刺激する。

 するとリムが反応を示してくれるが、まだまだ壊れた人形みたいで聞いていられない。もっと、もっと刺激が必要だ。ひと摘まみするだけで達してしまうくらい、最高の感度をこの胸に実現するのだ!

 摘まむ。こねる。撫でる。なぞる。擦る。絞る。押す。弾く。

 あらゆる刺激を、念入りに入念に愛情を込めて繰り返す。この矯正で、おそらくリムは先端に対するあらゆる刺激に反応する体を手に入れるだろう。

 だが……。

 反応はしてくれる。でも、まだ足りない。もうこうなれば……。


「『開月、二式』」


 先端だけではなく、おっぱい全体の感度を上げることにする。通常、おっぱいと呼ばれる部分は感度が低いものなのだが、それを覆す荒技だ。この矯正を完璧に遂行してしまえば、リムはおっぱいを優しく撫でられるだけでもひくひくと体を震わせることになるだろう。まぁ、一回だけならそこまでの影響はないはずだ。

 とにかくリム、絶対俺が正気に戻してやるからな!

 指先だけへの集中を解き、再び手全体にオーラを行き渡らせる。

 そして、残りの体力の全てを注ぎ込むつもりでオーラを全開にする。

 既にオーラの通り道はできている。遠慮はいらない。いけ!

 ふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにふに……。


「あひゃっ!? にゃ、にゃにこりぇ!? うひゃぅ! は、う、あ、い、いひっ、うぅっっ! んああ! にゃ、んみゃ! や、だみぇ、だみぇええええええ!」


 良かった! リムがお人形状態から元に戻った! 俺の全力スキルでリムを救えたんだ! でも……まだ途中だ。スキルを途中で止めることはできない。

 俺の意志とは無関係に、俺の手と指先はありとあらゆる刺激をリムのおっぱいに加えていく。時に激しく、時に繊細に……。

 そして、数分後。

 リムが大きく体を仰け反らせる。普段なら一度で終わるこの痙攣が、今回は何度も繰り返される。

 悲鳴のような、嬌声のような……切羽詰まった叫びが室内に響きわたる。『サイレンス』を使ってくれていて良かった。外に響いていたら流石にまずい。

 やがてリムが静かになったのだが、体はまだヒクヒクと震えている。


「リム……? 大丈夫? 意識は戻った……?」


 リムからの返事はない。心配になって顔を覗いてみたら……恍惚とした表情で気絶していた。


「や、やりすぎた……?」


 ちゃんと起きるよね? 大丈夫だよね? まぁ、呼吸はしているし、全然辛そうではないし……きっと、大丈夫だ。

 俺はリムが目を覚ますまで、しばらくその体を抱きしめて待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る