第26話 友達
茨園さんの告白に、俺は動揺を隠せない。
そりゃ、人間なら生えるものは生えるわけで、それが望ましくない場所に生えることもあるのだろう。
「えっと……まぁ、なんと言って良いやらだが……それは、茨園さんの希望は叶えられる。大丈夫だ」
「本当? それは助かるなぁ……」
茨園さんが離れ、ほっとした顔を見せる。毛の問題なら脱毛にでも行けばどうにかなりそうだが、その辺はあえて指摘しなくてもいいか……?
リムの方を見る。
「そういうのは、今はまだ親の同意書とかも必要だからねぇ。しかも、美美華には男親だけ。武がやってあげなよ」
「ああ……そうか。わかった」
茨園さんがいくらお金を稼いでいるとはいえ、まだ十五歳の高校生。母親がいればまだいいかもしれないが、今はこんな話もしづらいだろう。
「ふぅむ……。どういう状況かわからないけど、とにかく、宮本君のスキルが必要なんだね?」
ただ一人、状況が伝わっていない双山さんが心配そうに言う。それを聞き、リムが言う。
「そうそう。武のスキルが必要なのさ。ねぇ、美美華、まどかにも状況、説明しちゃっていい?」
「……は、恥ずかしいけど……。もう、ここまで来たら、い、いいよ」
「ん。美美華、乳首に毛が生えるのが悩みなんだって。で、武に生えないようにしてもらおう、って話になってる」
「ああ……そういうこと。なるほど……それはまた厄介な悩み……。大きいとか小さいとかとは別次元で、すごく困るよね……」
双山さんが神妙に頷く。女性として共感できるものがあるのだろう。
「事情はわかった。でも、リムはいいの? 宮本君がやるってことは、つまり、そういうことでしょ?」
「あたし、武がスキルを使うのは許すって決めてるから」
「……そっか。リムも立派だね」
「旦那の才能を潰すわけにはいかないから。さ、そうと決まれば、早速っちゃおう。美美華、武のベッドに座って」
「あ、ああ……うん」
美美華がベッドに腰掛ける。そこでふと、首を傾げ、俺に尋ねてくる。
「あれ? ところで、宮本君のスキルって、どういう風に使うの? 回復魔法みたいに、手をかざしたら効果を発揮するのかな?」
「……いや、そんな簡単なもんじゃない」
「じゃあ、どうやって……?」
「えっと……」
俺が答えあぐねていると、リムがきっぱりと言い切る。
「おっぱいを直に揉むんだよ」
「え、ええ!? じ、直に揉む!? そ、そんなスキル、ありなの!?」
茨園さんがとっさに胸を隠す。瞬時に顔も赤くしていて、恥じらっている様子が可愛らしいのは否めない。それはさておき。
「……とりあえず、これだけは言わせてくれ。……俺のせいではない」
「宮本君のせいではないだろうけど……。み、宮本君に揉まれることになるの……?」
「茨園さんが望みを叶えたいと願うなら」
「うぅぅ……。無駄なものは消してしまいたいけど、かといって、初めて異性に触れられるのが、こんなタイミングなんて……。っていうか、もしかして、宮本君、平良さんのも……」
「あたしもまどかも、武におっぱい揉まれたよ。今でも継続して揉まれてる」
「そ、そう、なの……?」
「ちなみに、あたしはおっぱいを大きくしてもらってるところで、まどかは逆におっぱいを小さくしてもらってる。
こっちはサイズの変更だからだいたい一ヶ月くらいは継続していかないといけないんだけど、そっちの場合はそこまでかからないんじゃない?」
「そう……。で、でも、ふ、二人は……平気、なの? 平良さんは、ともかく……双山さんは……?」
「私も最初は抵抗があったよ。でも、宮本君にならいいかな、って思い始めちゃった」
「そ、それはどういう……心境?」
「んー……どういう心境なんだろう? 上手く説明できないや」
「そう……」
茨園さんは、胸を押さえたままためらい続ける。今日親しくなったばかりの男子に胸を揉まれるなんて、やっぱり嫌だよな……。
「えっと、無理するな。女心なんて語れる身分じゃないけど、恋人でもない相手に胸を触られるなんて嫌だろ。無理矢理どうにかしないといけないものでもないんだし……」
茨園さんは、しばし迷った後に首を横に振る。
「……大丈夫。宮本君になら、いい」
「お、おい……。本当にいいのかよ? いつか、俺なんかに触らせたこと、後悔するんじゃないか?」
「後悔なんてしないよ。宮本君はもう、わたしにとっては大切な友達だ。そう思ってるのは、わたしだけかもしれないけど……」
弱気を見せる茨園さんに、俺も告げる。
「俺だって、茨園さんのことは大切な友達だと思ってるよ」
「そっか。良かった。……それなら、迷うこと、ないよ」
茨園さんがはにかむ。覚悟を決めた表情だ。俺も、その覚悟に応えないといけないな。
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