第4話

 エアコンは苦手だ。

 冷え切った体に、外気が心地良い。

「おじちゃん、ばいばい!」

「おじちゃんのじょうわんも、なかなかだね!」

「平岡くん、娘達の相手をしてくれて、ありがとな」

「こちらこそ、声をかけてもらって、ありがたいです」

 平岡は谷田がうらやましくなった。

 家族って、良いな。

 平岡は、彼女いない歴イコール年齢だ。結婚願望は、ある。幸せな家庭を持ちたい願望も、ある。だが、空回りしてしまう性格が災いして、良い人止まりになってしまう。

 ふと思い出したのは、幼なじみの女の子だ。昔から手先が器用でハンドメイドが大好き。最近は料理を楽しんでいるらしく、SNSに料理の写真をアップしている。

 幼なじみの女の子のことを思い出したら、胸筋の内で何かが燻り始めた。

 解散してから、平岡はショッピングモールに向かった。

 ランニングがてら10km走りたかったが、時間の余裕を考えて、自家用車を運転することにした。

 先程から胸筋の内で燻るのは、幼なじみの女の子のことだ。

 高校時代、平岡は彼女を深く傷つけてしまった。

 裸エプロンをやってほしい、と彼女に頼んでしまったのだ。

 そのことについて、謝罪はした。

 平岡が裸エプロンをして自ら恥をかく形で。

 だがしかし、何かが引っかかる。

 これで本当に良かったのだろうか。

 ギフト用のソーセージの詰め合わせやチーズ、クラフトビールなどを眺めながら、平岡の胸筋の内は熱くなる。

 誠意を見せたい。もっとお近づきになりたい。喜んでもらいたい。

 ちょうどお中元の時期だし、贈り物も有りだ。

 可愛らしいカフェエプロンを見つけ、平岡は店員に尋ねた。同じものがふたつありますか、と。

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