第3話

 エアコンは苦手だ。

 汗が引いて冷えた体に、冷房の風は天敵だ。

 だが!

 こんなときは!

 熱々の料理を食うべし!

「おじちゃんのパスタおいしそー」

「おじちゃんのパスタちょうだい」

「こらこら、おじちゃんじゃなくて、お兄さんだろう」

 群馬県内で展開されているイタリアンレストランのチェーン店。

 テーブルを囲むのは、谷田、谷田の娘ふたり、平岡の4人。

 直接言われなかったが、平岡は薄々気づいていた。

 世間の子どもは、夏休み。谷田が自分の子どもを放置するわけがない。

「あたしたち、学校のプールに行ってきたんだよ」

「プールたのしかった!」

 姉妹が学校のプールに行っている間に、谷田はフィットネスクラブ。昼に合流。そんなところだろう。

「谷田さんの奥さんは仕事ですか?」

「ママはお仕事」

「ママは保育園の先生なの」

  谷田の代わりに、姉妹が答えた。

「おじちゃんのパスタたべたい」

「ちょうだい! ください!」

「食べかけだよ? いいの?」

 たべる、と姉妹の声が弾んだ。谷田は、代わりに自分のパスタをあげようとしたが、平岡は小皿に自分のパスタを分けてあげた。地元野菜のペペロンチーノだ。

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