第4話 やっぱり雨は辛い

 思い付きで行動する癖は直したほうがいいかもしれない。



 東北ツーリング4日目。今日も小雨が降っている。いい加減雨は嫌になってきたが行くしかない。期限が決まっていなかったらもっと自由に行動できるのに、と思うがサラリーマンなので仕方がない。


 まずは仏ヶ浦へ向かう。むつ市から下北半島の南側を通る。海沿いを走る。気持ちのいい道だが、寒い。気温は18℃で雨、バイクは特に寒い。今日もレインコートを着て走る。途中の自販機でコーヒー休憩。今日は朝飯も食べていない。

 9時頃に到着。駐車場には車が1台だけある。流石に平日の朝なので、観光客も少ないらしい。駐車場から徒歩10分ほどで仏ヶ浦へ着く。長い下り坂だったので、帰りは辛いだろう。

 仏ヶ浦は圧巻であった。高さ何十mもある巨岩が並んでいる。そのどれもが奇岩と呼ばれる奇妙な形をしている。とても自然に作られたものとは思えない。ちょうど天気も晴れてきて、神秘的な風景だ。言葉だけでは表現しきれない。それほどまでに圧倒的な場所だ。海岸の奥に歩いていくと人がいる。どうやらドローンを飛ばしているようだ。確かに空中から見る仏ヶ浦もすごいのだろう。そのおじさんと話をすると、車中泊で観光しているらしい。車中泊をしながらカメラやドローンでの撮影を楽しむ。そういうのにもあこがれる。


 長い登り坂を歩き駐車場に戻る。バイクを見るとガソリンが心もとない。ガソリンスタンドを探すと付近に1つもない。一番近いスタンドは15kmほど先の佐井村。ツーリングまっぷるを見ると、道も気持ちいいらしいので、佐井村へ向かう。海沿いの国道338号を走る。崖沿いの山道から海が見える。ここも素晴らしい風景だ。

 その後、順調に佐井村でガソリンを補給し、むつ市へ帰る。あまりにも天気が良かったため、キャンプをしたい、と思う。思い付きで行動するのは私の平常運転。早速むつ市でタープを探す。夜から明日朝にかけて小雨が降るらしいので、タープは必須だろう。しかし、タープが見つからない。スポーツ店、ホームセンター、中古屋を探すが尽く外れ。中古屋の店員にグリーンハウスというアウトドア専門店をおすすめされる。八戸市か青森市にあるらしい。少し遠いが、ハンモック泊できるキャンプ場も近くにある、八戸へ向かう。


 流石に腹が減ってきたので、道の駅よこはま菜の花プラザに寄り道。14時。それまで今日は何も食べていなかったので、名物のホタテ丼が美味い。八戸まであと少しの距離だ、頑張ろう。と思っていたらオイル交換のランプがつく。まだバイクを買ってから4か月しかたっていない。故障か、と不安になる。幸い八戸にはYSP(ヤマハの経営しているバイク屋)がある。店に着くとすぐにオイルを交換してもらえた。どうやらバイクのオイルは3000~4000kmで交換が必要らしい。勉強になった。


 その後はグリーンハウス(アウトドア専門店)へ行く。しかし、タープがない。店員に聞くと、1週間ほど前まではハンモックフェアで、タープもあったらしい。今はない。ダメもとで近くのスポーツ店ゼビオへ行く。探してみると四角いタープが少しだけ置いてある。紐と杭は付属していなかったため、別売りのものを買う。これでキャンプ道具の総額が1万円を超えてしまった。

 無事タープも手に入ったので、小川原湖畔のわかさぎ公園浜台キャンプ場へ向かう。途中で辺りは暗くなり、周りは車のライトしかなくなった。19時に到着。しかし風が強い。台風かと思うくらいの強風だ。そして、県外利用者お断りの張り紙を見つける。詰んだ。心が折れそうだ。

 せめてハンモックの設営を練習しよう。風が強すぎてハンモックが船の帆のように張ってしまう。設置だけでも一苦労だ。悪戦苦闘し、どうにか設営する。ハンモックの中で、来る途中で買った弁当を食べる。中は思ったよりも快適だ。風の揺れも気にならないし、座り心地も良い。風が強くなかったら、タープを張って快適に過ごせるだろう。このツーリング中にキャンプしたい、と切実に思う。


 トリバゴでホテルを探す。八戸市と青森市に安いホテルがある。距離はほとんど同じ。八戸には一泊したので、青森に決める。ハンモックを撤収してバイクに積み直す。雨が降ってくる。予報では小雨だったが、本格的な雨だ。本降りの雨の中、真っ暗な国道4号をひた走る。寒い、疲れた、暗くて怖い。ゆっくり安全に走って22時にホテルに着く。全身びしょ濡れで疲れた。溜まってきた洗濯を済ませて2時に就寝。


 今日は疲れた。疲れすぎた。明日は楽にしよう、と決意する。そもそも思い付きで行動したことが悪かったのだ。流石に反省する。反省したので、明日の計画はしっかり立てることにする。チェックアウトぎりぎりまでホテルで寝て過ごし、十和田湖を見に行く。その後は盛岡で一泊。計200km程度のツーリング予定。これなら楽勝だろう。明日も楽しみだ。

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