③全部、ウソ


もう誰も、青島のことを表立ってバカにするものはいなくなった。


しかしクラスメイトたちは、自身のSNSで青島のことを話題にした。


「青島という男は、ハッシュタグが怖い。」


「青島くんは、こんな過去があって、ハッシュタグが怖い」


各々が思い思いに発信し、奇妙なこのネタは、次々と拡散されて、#怖い、と青島は有名になった。


インフルエンサー力診断こと、「イン力」で、トップランカーだった赤井に、青島のことをDMで送りつける者もいた。


「赤井さん、聞いてください!青島というやつは…」


―――――――――――――――――


青島は、「#怖い」が拡散されていることをほくそ笑んだ。

全て、彼の策略通りだった。


なぜなら、「ぜんぶ嘘」だからだ。



SNSをやっていないことも、#が怖いことも、井戸に閉じ込められた話も、すべてが嘘だ。


本当の彼は、SNS界隈では非常に有名だった。


青島ではなく、赤井というアカウント名を使っていた彼は、あらゆるSNSを駆使し、フォロワー数は、総計で100万をゆうにこえていた。


そのSNS上での影響力を駆使して、ビジネスにも取り組み、高校生では考えられないほどの額を稼いでいた。


「イン力」で、トップランカーだった赤井は、現実世界では#が怖い青島を演じていたのだ。


赤井のSNS上での影響力は、大学や大企業からも注目され、有名大学への進学と、巨大IT企業への内々定ももらっていた。


では彼が、#怖い、という嘘をついたのはなぜだったのだろうか。


それは、半年後の大学進学後に明かされることになる。


―――――――――――――――――


半年後、彼は、赤井名義で、#怖いに関わる一部始終をエッセイにまとめた。


#怖いは、SNS上で大きなムーブメントを起こしていたこともあり、本は飛ぶようにうれた。

彼は、SNSとリアルを駆使して、自らを大々的に売り出したのだ。


アンチも信者も、誰もが#怖い、を話題にし、ワイドショーでも賛否両論が飛び交った。



その本のタイトルは、その年の流行語タイトルに選ばれることになり、赤井は、多額の印税も手に入れ、時の人となった。


「# 怖い」


―――――――――――――――――


いかがでしたでしょうか。

読んでいただき、ありがとうございました。


この話の元ネタは、古典落語の「饅頭怖い」です。

立川談志師匠が得意だった演目ですね。


私は落語も好きなのですが、あまりメディアで取り上げられることはありません。


しかし、笑いあり、涙ありの落語はあらゆる物語の源泉だと思っています。

小説、漫画、映画、アニメ、あらゆる媒体が生まれる前から落語はありました。


また、「億男」という映画で、「芝浜」という古典落語を題材にしていました。

ですので、私もこの作品で、「饅頭怖い」を題材にさせていただきました。



ちなみにこのエピソードは、職場の飲み会の時に思い浮かびました。

私は最近、一刻も早くヒョーイザムライを書き上げたくて、なるべく早く帰って執筆したいのですが、転職早々ということもあり、飲み会を断れないことも多いのです。


飲み会と言っても、同年代は殆どおらず、40,50代のお偉いさん方に囲まれるので気を使いまくりなので、仕事みたいなものです(笑)


しかし私は、先々月から作家を志した作家のたまご「さったま」です。

せっかく飲み会に出るのなら、何かネタを持ち帰ろうとアンテナを張っていくわけです。


前職の公務員時代よりも、お偉いさん方の話は幅が広く、良い話題が聞けることもありますが、前回の飲み会で痛感したのが、年配の方もSNS、特にフェイスブックを多用しているということです。


そして、アイデアが生まれたので、忘れないうちに書きなぐるように、今回のエッセイを書き上げました。


「# 怖い」


我ながらなかなか気に入っております。


これをエピローグにして、長編に膨らまないかな、なんて思ったりも。



読んでいただき、誠にありがとうございました!!

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# 怖い 喜多ばぐじ ⇒ 逆境を笑いに変える道楽家 @kitabagugi777

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