第80話 幼女無双 1
チュドゥン
小鳥遊クン達が搭乗するCH47輸送ヘリが、某国所有の貨客船直上に到着して直ぐ、船体後部の甲板から、大きな火柱が立ち昇った。
「ちっ! もう始まってやがる!」
ゴリマッチョ部長は立ち昇る爆炎を確認すると、すぐさまパラシュート降下用のハッチを開き、小鳥遊クンを小脇に抱えて、朝焼けに染まる空へと飛び出した。
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ! あだっ」
パラシュートの安全降下速度ギリギリの落下スピードで、甲板に叩き付ける様に降り立つゴリマッチョ部長と小鳥遊クン。
ハリウッドのアクション俳優ばりに格好良い部長の登場とは裏腹に、小鳥遊クンは潰れた蛙の様な姿勢で甲板に突っ伏していた。
「ゲホ……部長ぉ、ひど……うげっ!」
激しく咳き込みながら立ち上がった小鳥遊クンは、部長への文句もそこそこに、視界に飛び込んで来た周囲の光景に絶句する事になる。
そこは……凄惨な地獄絵図が織りなす戦場であった。
辺りは硝煙の匂いと銃創痕で雑多に彩られ、完全武装した某国の兵士達が、死屍累々と倒れ伏している。
目を覆う様な惨状……
そんな中、
「おう。小鳥遊クンと部長なのじゃ。随分と遅かったのぅ」
小鳥遊クン
「エンリ! 何やってんのぉ!」
小鳥遊クンの安堵と困惑と涙と嗚咽の交じったツッコミが、辺りに大きく響き渡る。
「ばっ馬鹿!」
そんな小鳥遊クンの口を、ゴリマッチョ部長は慌てて塞いだ。
所詮は素人。
小鳥遊クンは、銃弾飛び交う戦場のど真ん中で、大声を上げる事の意味を理解していなかった。
直後、甲板に響き渡る小鳥遊クンの声 目掛けて、周囲からカチャ、カチャ、カチャっと、複数の発射音が聞こえた。
「榴弾、注ぅ意ぃ!!」
グレネードランチャーの発射音を耳にしたゴリマッチョ部長が、降下中の部隊に警告を発しつつ、必死の形相で小鳥遊クンを、その巨体で庇う。
エンリは、そんな二人を呆れた目で見つめながら、冷静に自らの腕を虚空へと向けた。
「大気に眠るマナよ……阻め!」
ダーン、ダーン、ダーン
四方から飛来して来たグレネード弾が、エンリの展開した見えない壁に阻まれ、空中で爆散する。
「直ちに制圧を開始しろ!」
続いて、パラシュートで降下してきた自衛隊の精鋭部隊が、甲板上に僅かに残った敵の残存勢力に対し、蹂躙戦を仕掛ける。
「
「
「
戦闘は一方的だった。
敵勢力には、まともに戦闘を継続できるだけの、銃弾すら残っていなかったのだ。
彼らは、よほど恐ろしい目にでもあったのか、傍目にも士気が低く、抵抗も散発的で、物量に勝る自衛隊員に、次々と制圧されていく。
程なくして、甲板での戦闘行動は終了した。
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