第79話 爆弾発言
「アルカナ・ワンは何処だ!?」
「それが分れば苦労しない!」
「とにかく探せぇぇ!」
一応、肩書きこそ『現場責任者』を有している彼ではあるが、実際の所は、各省庁間のパワーゲームの調整役でしかない。
初老の男性に与えられた裁量権など、殆どゼロに等しかった。
「さて、そろそろ陸佐から、何かしらの連絡がある頃合いだとは思うのですが……」
司令部が、アルカナ・ワンの痕跡を見失った以上、頼みの綱は、彼が秘かに連絡を取った厚生省事務次官と、単独行動を黙認しているゴリマッチョ部長達である。
彼の上層部に対する ささやかなる抵抗が、吉と出るか凶と出るか、それは神のみぞ知る事であった。
「首相官邸より入電です!」
オペレーターの声と共に、正面モニターに青ざめた総理大臣の顔が映し出された。
「緊急事態だ」
総理は、声を
「先程、野党のある大物議員を通じて、『某国の関係者』と名乗る者から、首相官邸に非公式な接触があった」
首相は随分と遠回しな表現を使用したが、「野党のある大物議員」が誰を指しているのか、誰もが すぐに思い至る。
「売国奴」の愛妾で親しまれている、ヒキガエルの親戚の様な顔立ちの野党議員。
彼の醜悪な顔を脳裏に思い浮かべながら、彼らは総理の言葉に傾注する。
「彼によると、我が国の国民と思われる<<幼女>>が、某国船籍の船内で、今現在、無差別テロを行い、善良な船員を虐殺して周っているそうだ。あちらはコレを我が国の謀略と断定。直ちに日本政府の責任の元、<<幼女>>を船から排除しなければ、船に搭載している<<核兵器>>の起爆も辞さない、と通告してきた」
「「おっふぅ……」」
イッタイ、何処カラ、突ッ込ンデ、良イノ、ヤラ……
「ひとまず、その<<核兵器>>と云うのは、信じても良いのでしょうか? 某国お得意の「やるやる詐欺」の可能性は?」
「希望的観測で判断は出来ない。『無い』と断定できない以上、『ある』と考えて行動するしかない」
デスヨネェー
「その……<<幼女>>と云うのは、何かの、隠語か、誤訳か、何かでしょうか? 常識的に考えて、<<幼女>>が無差別テロで、虐殺って……ねぇ?」
「ああ、私も根も葉もない妄言だと思いたいよ。普通なら歯牙にも掛けず、戯言と処理していただろう。だが、我々は「そうではない」可能性を誰よりも知っている。……違うかね?」
ソウダヨネェー
此処にいる誰もが、わかってはいる。
単に、誰かに否定して欲しかっただけ。
ただ、それだけなのである。
「あのぅ……」
重苦しい空気の中、1人の女性オペレーターが、おずおずと声を上げた。
「実は20分ほど前から、
「すぐに繋げっ! 馬鹿野郎!!」
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