第76話 因縁 1
「まさか、本当に借りられるとはな……」
マジ、信ジ、ラレナイン、デスケドネー
ゴリマッチョ部長は、古巣の防衛庁からCH47輸送ヘリコプター1機と、1個小隊34名の精鋭を借受ける事に成功した。
それも苦も無く、至極あっさりと。
海自からは「どうぞ、どうぞ」と、二つ返事に熨斗まで付けての貸与である。
「今回、防衛庁と外務省は、
同行する精鋭部隊の隊長の言葉を信じるならば、正直とんでもない話である。
『何が起こっているのだ?』
ゴリマッチョ部長達は、海上自衛隊幕僚監部に待機していた輸送ヘリに機体を乗り換え、同行する精鋭部隊と共に、首都港湾内に錨泊する、某国の大型貨客船へと向かう。
その機体の中で、ゴリマッチョ部長は首を捻りながら考える。
元々 厚生省は、アルカナ・ワンを巡る利権闘争から、かなり外れた立ち位置にあった勢力である。
3年前、この国で魔法と云う存在が、初めて確認された以降も、一貫して魔法技術に興味を示さず、どの勢力にも属さず、ただひたすらに中立のスタンスを貫いてきた。
小鳥遊クンがエンリの身柄を管理する事になったのも、「漁夫の利」と云うより「貧乏くじ」と云う側面が強い。
彼は所謂、「土下座要員」なのだ。
エンリが問題を起こす度に、関係各所を巡り、頭を下げ、後始末を行う。
ただ、それだけの為に選ばれた、哀れな人身御供に過ぎなかった。
そうやって厚生省が、アルカナ・ワン関連の一切の面倒事を引き受け、その他の勢力は、美味しい上澄みだけを搾取する。
そんな歪な権力構造が、長らく続いているはず……だった。
「いつからだ?」
ゴリマッチョ部長は、思わず疑問を口にする。
エンリを巡る権力構図が、ここ数ヶ月で急速に変化してきている。
でなければ、こうもすんなりと、防衛庁から装備と人員を借り受ける事など、出来なかった筈だ。
時期的には、おそらく あの放火事件以降……
いや、下手すれば、もっと前からか?
詰将棋をするように、何気ない一手が、後々大きな意味を持つように、段々とだが、着実に、厚生省を中心とした勢力が、出来上がりつつある様に感じる。
気付いた時には、既に状況は『詰み』だった。
そんな、真綿で首を絞めるような、厭らしい手……
「やはり……厚生省事務次官、あの野郎かっ!」
そんな芸当を
部長の脳裏に、「無能」「昼行燈」と省内で揶揄されながら、なぜか事務方トップにまで辿り着いた、異才のキャリア官僚の顔がチラついた。
「部長。ちょっと良いですか?」
「ん!?」
ふと気づくと、小鳥遊クンが真剣な面持ちで、こちらを見つめていた。
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