呪われし不老の旅人、世界を癒す。 Edy様作

【あらすじ引用】

魔法や悪魔や吸血鬼などがおとぎ話の中だけだと信じられている中世の地球によく似た世界、呪われて不老になったギルという青年がいた。


ギルは年老いたサムをからかう。

「しわだらけじゃないか」

年老いたサムは笑い飛ばした。

「このしわの一本一本が儂の生きた証。羨ましいだろう?」

「そうだな。私には高望みすぎる夢かもしれない。羨ましいよ」

「諦めたのか?」

「まさか。ひがんでいるだけさ」

その言葉とは裏腹に、ギルの表情はにこやかだ。


ギルは呪い師の言葉を思い出した。

「私を追いかけて来なさい。それが呪いを解く唯一の方法だから」


ギルは旅を続ける。出会い、別れ、時には助け、時には迷う。これはギルに係わった全ての人の物語。


【良いところ三点】

1*始まり方がとても素敵である。

まるで絵本の世界にでも迷い込んだかのような素敵な世界観。

旅への始まりが手記というのがとても良いなと感じた。その手記を巡ってある人物たちが話をする。恐らくいつもならば、こういった流れにはならないのであろう。本に対して疑念を抱いているのかと思いきや、意外な展開となる。


2*とても考えさせられる物語である。

現実にも不老不死を求める人は多い。しかし、不老不死とは周りから取り残された時の中に生きるということなのだろうと思う。人は老い、いつかは朽ちる。だからこそ今が大切に出来る。時代についていけないという言葉があるが、仮に老いなくても時代に何百年もついて行かねばならないとしたら、大変だろうと思う。最終的には、一人引きこもるのではないだろうか? 

この物語で素敵だなと思うのは、旅人の呪いを知った上で良き友人がいるということである。


3*視点がとてもユニークである。

良い点のたくさんある物語であるが、三つということで視点に注目したい。

この物語は、旅人の体験をつづった手記を読んでいるという設定となるのだが。視点は旅人ではない。旅人の出会った人々の生きざまが描かれているのである。しかしながら、一話を読むと別視点からある人物の生き様を垣間見ることができる。凄く特殊な描き方に思えるのだが、それがとても物語に合っており感動した。つまり、Aの体験した手記だがBについてC視点から描かれており、Cが学び成長していくというもの。これはあくまでも一話についてだが。なので、物語の見どころがぎゅっと詰まっており、共感だったり読んでいろんなことを学び、考えることができるのである。主に前後編のセットになっているのも良い。(前後編ととなっているわけではないが)前編で問題提起、後編でそれについて主人公の答えが導かれているように感じた。(これは一話についてである)素敵な作品だと感じた。

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