君の姿と、この掌の刃   日諸 畔(ひもろ ほとり)様作

【あらすじ引用】

最初に人を殺したのは15歳。

”カムイ”と呼ばれる力を使う少年は、兵士として人殺しを続けた。

切り裂く事に特化した少年は終戦を期に軍を退役する。

敗戦から10年が経ち、少年は青年になった。

”カムイ”が軍事利用されることを知った青年は、再び戦うことを決意する。


青年は自身のもつ特殊な能力とその正体、そして見えない少女の核心に迫る事件に身を投じる。


【良いところ3点】

1*舞台背景がとても分かりやすく、流れるように描かれている。

エピソード1 「私を探して」part.1

物語を形作るのは、何と言っても舞台。どんなところで、主人公が何をするのか? これが明確な物語は、読みやすく分かりやすい。例えばこれを食事で考えると、スーパーにカレーの材料を買いに行く。目的地と目的が明確であるということである。その道中でいろんなことがあるというのが分かりやすい物語ということだ。これが何処に何をしに行くのか分からないと、何が書いてあるのか? 何を目的として書いているのか? 分からないということになる。


2*この物語で重要な”カムイ”。対照となる機械文明の産物と比べることにより、カムイがどんな風に使われるのか? どれほど人々の生活に浸透していたものなのかが伝わって来る。

ただ漠然と説明するよりも、比較対象物があることによってより親しみやすくなっている。


3*モノローグがとても巧い。

主人公の視点で進んでいるのだと思われるが、来客の仕草や容姿など細かく丁寧に描かれている。モノローグは大きく分けて景色などの目に見えているものに対しての描写と思考というものがある。この割合や丁寧さは、登場人物の性格や物の考え方によっても変わって来る。逆を言えば登場人物によって、簡単に個性を出せる部分でもあるのだ。主人公が、何処を見ていて何を考えているのか、とても分かりやすいと感じた。

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