運命の鎖に繋がれて  まぼろ様作

【あらすじ引用】

「どうしてこの何も無い世界に住むボク等が運命共同体だと思う?」


これは命の相対性を問題提起した短編小説である。


【良いところ三点】

1 最初から最後まで、”対照”をモチーフにしている。そして、ブレていない。

二人は白と黒という相対するものであり、考え方は真逆。しかし、真逆は本当に真逆なのだろうか?考え方の違いがあるだけで、同じなのではないかと感じた。同じ議題に対し、真逆の意見が述べられるというのは珍しいことではない。結論までの過程は考え方一つで変わる。同じことを指していて、その概念が違うことにより、結果に満足できるかできないかが変わるのではないだろうか?

と、考えさせられるところが凄いと思う。

つまり生きるも死ぬも同じこと。生きていると感じるのは、比べる何かがあるからだ。ただそれだけのこと。

(消滅を死と捉えていては、この物語は理解が難しい)

2 問題提起作品であるという事は、読ませることによって考えさせなければならない。それがきちんと満たされている。実際にはこれは捉え方であり、どちらが正しいとは言えないのではないだろうか?

繰り返される毎日を幸せと捉えるものもいれば、変化のない日常を退屈に思うこともある。時が止まるという事は、なんの変化もないことを示しているが、人は知らず知らずに刺激を受けながら生きている。すると、人は見た目には変わらなくても成長を続けているのである。それに気づかない人間が、本当の意味での時に取り残された人間なのではないかと感じた。つまり、いろんなことを考えさせるところが凄い。

3 奇跡は起きない。

これも素晴らしいと思う。ご都合主義でもなく、照明の為に黒は消えたままになる。自分のしでかしたことに後悔し続けることになる。それは、教訓という意味のラストで、一貫性があると感じた。

その為、伝えたいことがきちんと伝わっている作品であると感じる。

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