第34話:シーカーの事情と異物と命の天秤

 ノエルは再びセルタス商業区異跡に来ている。今回は最初からセルタスモールに来ている。前回の探索では異物を回収する事よりも地理把握などに時間を割いたた為3買いに行くことが出来なかったし他にも調べられなかった場所も多かった。よって今日は3階を中心に武器になりそうな物などを探しに来た。


『今日は3階を中心に異物収集をするので良いのですね?』


『えぇ、ホームセンターって言うなら工具とか武器に使えそうな物もあるかもしれないじゃない?』


『確かに工具などであれば武器に転用できるかもしれませんね。ですがそれなら純正の武器を購入する事をお勧めします』


『まぁいいじゃない。稼げれば良いのよ』


 事前にフェンリルが施設の構造情報を調べていた。その情報から3階にはホームセンターの様なものがあるというのは分かっていた。これは前回この異跡を出る際に生きている案内端末を発見したことで分かった事だ。

 今回ノエルは何時もより大型の異物回収用のリュックを持って来ている。大型の異物でも運ぶためだがそれでも限度はあり、小型の発電機が二個入る程度だ。


 ノエルが意気揚々と三階に足を踏み入れると多種多様な店舗が並んでいる。二階はドラッグストアと言う毛色が強かった事を考えればこの3階はショッピングモールらしい階層だろう。


『かなり色々な店があるのね。言ってたホームセンターもあそこにあるけど服屋とかもあるし』


『二階も完全に探索した訳では無かったので医薬品以外もあったのかも知れませんね。フロア的にはあれだけとは考えにくいです』


『とりあえず今日は工具関係を持って帰ると決めていたのだし。ホームセンターに行きましょう』


 ノエルが入ったホームセンターの区画はほどほどの広さの中に幾つかの機種の工具と思われる異物が大量に展示されていた。更に奥のエリアに行くと幾つかの発電機と思われる機械が並んでいた。大まかに大型・中型・小型に分かれており。小型の物であればノエルの腰程の大きさであるが大型となればその数倍は大きいサイズとなる。

 一通り店内の異物を確認したノエルは、持って帰れる限度と持ち帰りたい物のリストアップ化を始めた。今回持って来たリュックはそれなりに値が張る高性能な製品で拡張マガジンと同じ技術で作られており見た目よりは断然入るがそれでも持って帰れるものに限度があった。


『んー…小型発電機は欲しいわね、でも結構容量を持っていかれるわね』


『レーザーソーが数個と幾つかのエネルギーパック。後は小型発電機が三つ……と言ったところでしょう』


 AR映像の持って行く製品のリストと占有率を眺めながらノエルは悩む。この後は帰るわけだが、此処は荒野である。予期せぬ戦闘やモンスターの出現にシーカーを狙う盗賊等々。様々な要因を考えれば余裕が必要である、戦闘を最低限は出来るだけの余裕がだ。弾薬を捨てれば確かに積み込める異物の量を増やすことが出来る。だが戦闘で弾切れを起こすという機器駅状況に至りかねない。


『んー…人を頼るのも考えないとかしら』


『ノエルは車を持っていませんが買おうと思えば可能ですね。ですがその意見には賛成します。二人いれば大型の発電機や運べる異物も増えます。それに戦闘面でも余裕が出ます』


『リーナ…くらいしか居ないわね』


 リーナは同年代のシーカーではあるがノエルからすれば格上のシーカーでしかも組織に所属しているシーカーだ。


『めんどくさそうね』


 これでもノエルはシーカーランクが未だに20を少し超えた程度のシーカーランクしかない。こんなシーカーが格上のシーカーに、しかもしっかりとした実績のあるシーカー組織のシーカーに依頼しようものならいくら吹っ掛けられるか分かったものではない。

 ましてやノエルは交渉事は流れに身を任せて行っている。流石に完全に足元を見た依頼や報酬が無いも同然の依頼を受ける気は無いし出来る限りの努力をするつもりだが。口八丁でノエルは相手の交渉担当者に勝てるとは欠片も思っていない。そもそもそんな面倒で、しかもこちらをイラつかせるような交渉をされた日にはその依頼担当者を撃ち殺す自信があるレベルだ。


 どうしたものかと悩みながらもノエルは商品の入った箱を箱に入ったままリュックに積み込んでいく。この箱から中身を出さないのは自体も異物である為だ。この箱には状態保存機能が搭載されていることが多いと事前にフェンリルから聞いていた。以前そう言った類の異物を空けようとした際に注意されたのだ。


『この箱自体も異物なので一緒に持って行きましょう。そこそこの金額でこの箱も売れるはずです』


『なるほどね。以前そう言った箱に入った宝石をシーカーオフィスで売って宝石を返品されて保存容器だけ買い取られたことがあるわ』


『その宝石はどうしたのですか?』


『多分まだ捨てるに捨てれず残っているわ』


『今度そう言った物を買い取ってくれる業者の所に行きましょう』


 この事を覚えていたノエルは箱ごと入れていたがフェンリルより箱から出すように言われた。


『この箱は不要です。外してしまいましょう』


『でもこれも異物なんじゃないの?』


『はい、ですがこの箱に入ったまま持って行くよりも中身を持って行った方がスペースを確保できます。今回はその方が良いでしょう』


『分かったわ』


 箱から中身を出し始めたノエルは沸き上がった疑問をフェンリルに聞いてみた。


『こういう時って何か保存容器みたいなのってあるのかしら?纏めて入れれる感じの』


『ありますよ。ただ今回のような大型の物となると厳しいですね。例えば小型の以前大量に手に入れた情報端末や、異界の服等であれば保存袋等を買って。その中に入れればある程度外部からの衝撃を防げるでしょう』


『エイリスの所で売ってるかしら?』


『どうでしょう?エイリスの店は銃器や強化服後は買取が強いですから。明日聞いてみては如何でしょう?』

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