第33話:高額な異物と姉

 セルタス商業区異跡で異物を収集した翌日ノエルは幾つかの異物を持ってエイリスの家を訪ねていた。

 異物売却という事を前日には伝えていたので。何時もの武器購入の店舗ではなく検査マシーンの並んだ場所に通された。物珍しそうにしているノエルだったが直ぐに異物を取り出し並べていく。今回ノエルが持ってきた異物は主に情報端末を数種類を数個を持って来た、これはどんなものがどれくらいの値段で売れるか分からない為。残りの分がいくら位の金額になるかの目算にする目的もある。


 ノエルがその異物の情報端末を並べた瞬間エイリスは驚愕の表情のまま数瞬固まった。


「お姉様これをどこで!?」


 ノエルは出所をいうか迷った。だがもう残っていないことも考えれば大丈夫と判断し口を開いた。


「セルタス商業区異跡よ。あまり詳しくは言えないけどもう残ってないわ。私が多分全部持ってきたから」


「ま、まだあるんですか?」


「えぇ。今日はいくら位で買い取られるか分からないからこの三つだけ」


「そうですか。とにかくこの三つで一億5000万でどうでしょう?情報料の意味も込めて1箱500万の回復薬も付けます!」


 ノエルは事前にフェンリルから一部を売っただけで1億は超えると言われていた為さほど驚きはしなかった。だがかなりの高額な買取金額に実感がわかなかった。


「それで問題は無いわ…」


 ノエルが急な大金に内心震えているところにフェンリルから新しい装備を購入する事を勧められた。


『今回でそれなりに稼げたので次着た時に装備を購入する事にしましょう』


『何買うの?』


『オーダーメイドはまだ無理ですが重機関銃そエイリスのガレージにあったはずです。恐らく以前エイリスを襲った男が装備していたものでしょう。それを購入しましょう。後は幾つか装備を注文すればそれなりに火力も補えるはずです』


 ノエルがフェンリルと装備購入の装弾をしているとエイリスから異物売却についての相談をされた。エイリスとて商人だ、目の前に大口の利益を産める相手がいるというのに黙って他に流すほどエイリスは間抜けではなかった。だがエイリスとてそう簡単に大量の高額異物を買い取れはしない。異物を買い取りそうな企業に売って金に変えるのには時間がかかるからだ。


「お姉様お願いがあります!その異物を他に売らずにキープしておいてほしいのです!その代わり近いうちには全ての異物を買い取ることが出来るようにします!」


「キープしておくのは構わないけど…明後日にはもう一回持って来てその時に装備を購入するつもりだったのよ」


「もう一回位なら…大丈夫です」


「じゃあ…明後日来るから。大丈夫?物納とかでも良いのよ?」


「考えておきます…」


 エイリスは色々な感情の入り混じった表所を浮かべてはいるが、どちらかと言えば喜んでいた。最終的には大きな利益を得ることが出来るからだ。

 エイリスには姉と慕う人物が二人いる。一人は彼女の前で微笑んでいる少女ノエルだ。最近はかなり表情を出すようになった、エイリスの最初の印象は氷のような少女だった事から比べれば友人にはその氷が解けると思えば嬉しく思っている。もう一人の姉は正確には慕ってはいない姉だ。実姉だが三大企業の優秀な次期社長として衛星軌道上のコロニーで紅茶でも飲みながら過ごしているのだろうとエイリスは思っている。正直姉は性格以外は完璧だとはエイリスも思っているがその性格は平気で毒を吐き。気に入らない人間は表向き事故死させ、一度優秀・有能と判断した人間は何としてでも自分の物にしようとし実際に実行可能な事にその性格の悪化に拍車をかけていた。

 姉は多少歪んではいるものの妹であるエイリスに親愛を向けていた。問題は性格が悪すぎてエイリスから毛嫌いされている事だ。今回姉を頼ることになるのをエイリスは今でも悩んでいるがエイリスにはこれ以上の利益を出せるカードは無かった。


 エイリスの家を出たノエルは家に帰ると直ぐにあの義体を隠すためテンリ旧陸軍基地異跡へバイクを走らせた。既に粗方調べつくされ、レイヴン財団も既に退去したテンリ旧陸軍基地異跡であればシーカーも少なく。フェンリルは基地の構造を熟知しているため見つかりにくそうな箇所と保管用ボックスも詳しかった。

 ノエルはフェンリルの案内の元。周辺のモンスターを蹴散らしながらテンリ旧陸軍基地異跡を進む。多少残党との戦闘こそあれど以前のノエルとは各段に基礎戦闘技術が違う。指して苦戦することも無くフェンリルの案内に従って基地内を進む。


『懐かしく…っていうほど懐かしくはないわね。十分真新しいわ』


『一部は戦闘で地形が変化しています。多少風通しが良くなっていますね』


『けど結構モンスターは少ないわね。数体は倒したけどそんなに多くは無いわ』


『先日の防衛戦に使われたのでしょう。ラッキーだと思ってください』


『そうね、今のうちに隠しちゃいましょう』


 異跡の地下にフェンリルの案内の元やってきたノエルは。指定されたパスワード入力式のロッカーを発見する。フェンリルがロッカーのロックを開けてその空の中身をナノマシーン義体が待機状態になったキューブをその中に入れる。


『早いこと脱出しましょうか』


『そうですね。早く休んで明日に備えましょう』


 フェンリルとノエルはしっかりと位置情報を記録すると基地内でありながらバイクを飛ばしテンリ旧陸軍基地異跡を後にした。

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