第19話:フォルテノと商談とO.D.O
このモラルの崩壊した世界にも。銃を構えただけで撃ち殺されかねないレベルの統制された場所がある。
防壁と呼ばれるその巨大な100mの壁の周囲には都市機構維持局所属の治安維持を目的とした部隊員が警戒している。
その防壁のそばには一際大きいタワーがある。防壁とほぼ同じ高さのそのビルはこの第三都市においてのシンボルとも言える。
壁内の上流階級の者もそのタワーを利用することは多い。一回にあるシーカーオフィスや二階の食堂はノエルも利用したことがある。
二階の食堂ですら今のノエルでは手が届かないレベルの食事の品質と値段だった。
此処には食事出来る場所がもう一つ存在する。高級料理店と名高いシリウスと呼ばれる店だ。壁内の人間ですらおいそれと行けないレベルの高級料理を提供するその店では人口生成物等一切使わずに新鮮な食事を提供し。そこにある装飾品ですら人一人の一生を借金地獄に出来る物ばかりだ。
今回シリウス呼ばれたノエルだが最初は特に調べもせずに了承した。後から顔を引きつらせるほど驚いたが時すでに遅し。
エレベーターが55階を知らせる自動メッセージが鳴り、自動で開いた扉の向こうには色鮮やかな調度品が出迎える。
『私場違いじゃない?』
『ノエルだ今の収入で1年死ぬ気で稼げば一食食べられると思いますよ』
『遠回しに言わずにはっきりどうぞ?』
『今着ている装備のスペックを見ただけなら場違いです』
既に来ているはずの名前を告げて、店員に案内してもらう。その際に武装持ち込み禁止の為、装備していた銃器を預ける。
案内された場所は個室で完全防音らしい。中に入ると既に待っていたフォルテノがノエルを向かえ座るように促す。
「此処に来るのは初めてですよね?であれば本日のおすすめコースがおすすめですよ?外れは無いので」
「ご丁寧にどうも…自分の身の程は分かっているので」
一先ず注文を通して食事が届くのを待つ間商談が始まった。
「一先ず今回の仕事お疲れ様でした。思ったよりも収穫が大きくそれでいて周辺にいたモンスターが機能を停止したので予想よりも大幅に大きく収穫がありました。よって貴女への報酬も割高になっております」
そう言って表示された空中ホログラフィック映像には予定より0が一つ多くなっていた。
「割高…10倍ですか」
「ご不満ですか?」
「いえ、むしろ逆ですね」
「ふむ、貴女はこちらの想定より活躍してくれました。今後への期待と言う点もありますが貴女への正当な報酬です」
「…では遠慮なく頂きましょう」
「口調。無理して敬語を使わなくても良いんですよ?」
「交渉事で要らぬ厄介事を起こすよりはいいと思いました。同業者どうしの雑談交じりの仕事の相談ならまだしも」
「そうですか」
フォルテノはうんうんとニコニコとした笑顔のまま話を続ける。
「貴女とは今後もいい関係で居られそうで何よりです。今後とも仕事を依頼する事としましょう」
「あまり甲斐被らないでください。私はこの前の戦闘で自身の無力さを痛感しましたから」
そこまで話したところで食事が届き一旦この話は終わりとなった。
届いた食事は芸術品と見紛うレベルの物で、一つ一つが超高級である事を納得できる美味なるものだった。
一口食べるたびに頬が緩むノエルだった。
「貴女食事中でもその仮面外さないのね?」
「あまり顔を出さないようにと以前言われましたし、以前この顔のせいで面倒ごとも起きましたから」
「そう…」
食事も一通り終わり食後の紅茶が運ばれる。
それに一口口を付け一息つく。
「ノエルさん、貴女O.D.Oって知ってる?」
「オド?」
『フェンリル知ってる?』
『いえ、知りませんね』
『そう…』
「知らなそうね。Object of Different Organ その頭文字を取ってO.D.O 極一部の人間が感情の噴出によって発現する超常的器官。性能はまちまちながら絶対数が少ないしそもそも発現出来ない可能性もある」
「それがどうしたんですか?」
「いや、もしかしたら持っているのかも?と思っただけ。モンスターも持っている可能性は十分あるから。見つけたら高額買取するからシーカーオフィスを経由せず直接連絡して。所有モンスターの情報でも良いわ」
「その時はそうします」
その後紅茶も飲み終わり解散する事になった。
「じゃあ、またよろしく。精々死なない様に」
「善処します」
エルフィスタワーを離れたノエルは思わぬ高額報酬で内心喜んでいた。
『これで新しい装備が買えるわね』
『そうですね。ですが一先ず違う方向で戦闘力を向上させようと思うの』
『違う方向?』
『それはですね。身体能力拡張系ナノマシーンです』
そう言ったフェンリルによってノエルは明日の予定を決められた。
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