第18話:フェンリルブートキャンプ

 帰宅したノエルはすぐさま強化服を始めた装備を脱ぎ捨てると適当に食事と入浴を澄ませた。フェンリルと話をするためだ。

 何時もよりも遅くに帰ってきたというのもあるが


『もう少しゆっくりしてもよいのでは?』


『何時もはもっとゆっくりやっているわ。改めて話をしたいの。出来れば早いうちにね』


『まぁ、良いでしょう』


 苦笑いを浮かべていたフェンリルは一息つくと話し始めた。


『改めて自己紹介から致しましょう、東部方面軍極東エリアテンリ陸軍基地所属汎用及び戦闘補助管理人格のフェンリルです』


『…それだけ?』


『質問くらいは受け付けますよ?とは言え、私は作られ次第直ぐにあの基地に放り込まれたので答えられることは私の事だけですが』


『え、そうなの?』


『えぇ、なんでしたら起動したのは貴方方が来たことで侵入者が来たという事で発生したアラーム叩き起こされたのが初です』


『つまり起動一日目?』


『起動はしています、これでも自己進化を繰り返しておりますので、そこで得た結論としては。孤独と暇は人を殺すという事です。人ではないので死にませんでしたが』


『あぁ、そう…』


 苦笑いを浮かべたノエルはそのまま座っていた椅子の背もたれに体重を預ける。


『私は最初自称便利屋って言ったでしょ?でも私は全然強くない、それを今日改めて理解したの。私をサポートするんでしょう?だったら私を鍛えて欲しい』


『勿論そのつもりです、それも含めサポートの内です』




喧騒が、静寂を殺す。何時何が起こるか分からない荒野にある都市にも夜の暗闇が訪れる。

フェンリルがインターネット世界を放浪する、久方ぶりの世界をフェンリルは興味深げに彷徨う


『久しぶりの外…楽しみましょう』




早朝、いつも通りのトレーニングを終えたノエルがキッチンに戻って食事の準備を始める。


「それで、今日はどうしようか。何もないなら昨日のマントの性能テストがてら異跡に行こうと思うけど」


 フェンリルに向かってそう言うと彼女は考える素振りを見せた後口を開く。


「勿論貴女の意見を尊重します。ですが、貴女を鍛えると言う点においては私にも手伝えることがあります。幸い、貴女の仮面は高性能ですから」


 そう言われたノエルはお金は入る予定があるし今日は訓練に勤しむことにした。


「じゃあその訓練にするわ。どういった訓練をするの?」


「それは食事の後にしましょう」



 食後ノエルは都市近くの荒野に来た。以前射撃訓練を行った場所だ

手持ちの装備をすべて持って来ているのはいつもの事だが今回は訓練に来ている。


「それで、何をするの?」


『先ずは貴女の近接戦闘能力を調べます。さぁノエル?死に物狂いで戦ってください』


 そう言った次の瞬間あの基地でよく見た小型四脚モンスターが3体現れた。

 驚いたノエルだが直ぐにベクターで銃撃する。かつて此処まで近距離で戦闘をしたことは無いノエルは必死で対応するも無惨にもミンチになる。


 ミンチになったはずのノエルは無傷で発射したと思った銃弾も発射されては居なかった。


『おぉ、勇者よ死んでしまうとは情けない』


『どういう事?』


 ノエルがそうフェンリルに問うと直ぐに答えた


『ノエルの強化服の動きをこちらで操作して実際に銃撃を受けたかのような錯覚を与えました。モンスターは仮面に表示させた映像でARビジョンに近いですよ』


 一応の説明を受けたノエルは一応納得し続けるように頼んだ。


『丁度いいわ、弾代も掛からないし。良いトレーニング』


『それじゃあ手加減はいりませんね?体感時間操作を上手くできるように訓練にもなりますので』


『いや、手加減はして欲しい』


 その後もフェンリルによる手加減の無いトレーニングが始まった。

 ノエルが見たことのないモンスターも多く含まれておりかなり実戦に近しい戦闘をたまに休憩を挟みながら丸一日行った。


 初日である程度の対処を出来るようにこそなったがやはり少々限界を感じることが多かった。

 それをノエルは感じていたが今回の報酬が入ったところで装備の火力を上げても正直変化があるとは思えなかった。

 かといって強化服を新調しようにも武器よりも数段高い強化服は手が出ない。


『それについては報酬が出たら何とか出来ると思います』


『何とかって…そう簡単にいくの?』


『勿論ノエルは技量がまだまだです。百聞は一見に如かずと言う言葉が私の時代にはありました。やはり実践が一番ですしノエルの現在の初心者をやっと抜けた程度の技量を鍛えるつもりです。それでも装備面で大なり小なり影響を与えることが出来ます。まずは明日の報酬次第にしましょう』


 少々の不安を感じながらノエルは帰路に就いた。




 帰宅したところで丁度通知が入ったことをフェンリルから聞く。


『誰から?』


『都市機構維持局ですね。依頼内容は不穏なモンスターの群れの調査依頼です。普通は都市機構維持局からの依頼は断れませんが。その依頼開始日は明日です』


『…無理じゃない?明日はフォルテノさんとの商談でしょう?』


『じゃあそれを理由に断りますか?』


『流石にレイブン財団との商談と天秤にかけたらね』


 普通なら都市に住まう者として都市から悪い目で見られないようにするためにも。都市機構維持局からの依頼は断らないというのが常識と言える。

 しかし都市機構維持局は三大企業の傘下の組織であるため、三大企業との縁と都市機構維持局からの評価を天秤にかければ私は三大企業を取ります。

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