第15話:因縁消失
異界は幾つか種類があり主に機械文明と呼ばれる今日向かう異跡は現世界に近くもしかしたら同じでは?とされている。とは言えそんな事は詳しく調べなければ分からない。向こうはただでさえ攻撃してくるし、こちらも異物捜索の為に勝手に人の家に盗みに入っているようなものだ、殺されても文句は言えない。
ノエルが荒野を車で自動運転に任せ走らせている。情報収集機器の情報を眺めながらだが朝食のシーカー向けの食事をモソモソと食べている。かなりの早朝で辺りはまだ薄暗い中を日の出の明かりを頼りに自分で作るよりも美味しいサンドイッチに複雑な顔を浮かべながら食べ終えるとコーヒーで流し込んだ、もっとも半月ちょっと料理を練習しただけでプロの料理に勝てる訳がないだろう。
借りた車はシーカー向けの車両でレイヴン財団の仲介で借りることが出来ている、本来ノエルのシーカーランクで借りることは出来ない製品だがレイヴン財団の部品の一台を借りて使用している。別にノエル自身はバイクで行くつもりだったが弾薬も多かったし借りれるならという事で借りたのだ、一応帰りはバイクで帰る予定で機動力としても使いたいのでバイクは積んである。
ノエルは運転マニュアルを眺めながら警戒を続けている、ノエルが運転せず自動運転に任せきりなのは運転ができないからだ。ノエルも初めて見た物を使いこなせるほど全知全能では無いので自動運転機能付きを借りマニュアルを眺め少しずつ練習がてら操縦する程度だ。
テンリ旧陸軍基地異跡、文字通り軍事基地だが現在も一応稼働しておりその広大な基地からは機械系モンスターが絶えず生産されては一部が基地外に流出している。その数キロ離れた場所に簡易基地がレイヴン財団によって作られており簡易防壁とダース単位のASに武装をした部隊員が周囲を警戒している。そこが今日のノエルの拠点である。
ノエルが車を所定の場所に停車し荷物を卸して武器を装備する。
しっかり装備してから手続きを済ませてしまう。
「名前は?」
「ノエルよ」
「子供か、保護者はどこだ?」
「そんなものはないわ、こんな子供を呼び出したフォルテノって人に文句言ってもらえる?」
その言葉を聞いた受付担当者は怪訝な顔をし顔を出すように言う
「じゃあちょっと顔を出せ、顔を隠した不審者通すほど間抜けじゃない」
そう言われ「確かに」と納得したノエルは仮面とフードを外し受付担当者の男に見せるとかなり驚いた表情をしたあと戻すように言った
「一応言うが騒ぎは起こすなよ?流石にそんなバカではないと思うがな」
そう言って連絡用の通信端末を渡してきた。
「これは常に身に着けておけ、せめて言われたら見せれるようにはしろ。下手すれば撃ち殺されるからな」
「分かったわ」
特にアクシデントも無く入場できたノエルは、通信端末の地図データを元に他のシーカーの居るキャンプに向かう。キャンプに向かう道中には明らかに熟練者なシーカーが多く、素人目でも分かる程に充実した強力そうな武装を装備した者達ばかりだ。
少々肩身の狭さを実感し、ノエルはシーカー達の集まるキャンプへの歩を早めた。
キャンプはかなり大きく中には簡易テーブルに名札があったので自分の名札の場所に付くと一人の女性が居た。ノエルが不審に思いながら近づくと、その女性が立ち上がりノエルに挨拶をする。
「貴方が便利屋、いえ元シーカーのノエルさんですね?初めまして、おはようございます」
いかにもビジネスマンと言った感じのスーツを着た女性だ。ノエルが一応仕事仲間としての義理として挨拶を返す。
「おはよう、確かに私はノエルだけど。貴方は?」
「私はフォルテノと申します。貴方に依頼を送った依頼主です。少しお話があります、付いて来てください」
その拒否権の無い依頼主からの命令を聞きノエルがフォルテノに付いて行く。付いて行った先は一際大きい簡易拠点で重要拠点らしく、周りには重装強化外骨格の隊員などが複数人見張りを行っている。フォルテノに案内されその中に入り奥の一室に入るように促される。
その中には何時ぞやの黒い全身装備の部隊員が居た、もしかしたらと予想していたノエルはすぐさまTTS短機関銃とエクシウムに手をかけるも二名の隊員に取り押さえられる、その圧倒的な技量、装備の差に諦めたノエルは銃から手を放す。
ニコニコ笑顔のフォルテノがノエルを取り押さえていた二人の隊員に目配せするとノエルを開放した、フォルテノが座りノエルにも椅子に座るように指し示す。
ノエルが座るとフォルテノが笑顔を崩さず交渉を始めた。
「大体お察しの事かと思いますが。そこのバカどもが失礼を働いたとの事で、そのお話です」
「はぁ…こちらも反撃しましたし気にしなくていいです」
「それは良かった、では謝罪と言っては何ですが。今回の作戦の報酬に色を付けておきましょう。この作戦に関する事であれば、何かほかにご要望があれば可能な限り叶えてみましょう」
「弾薬費持って貰ってるだけでも大助かりなのですが……そう言う事であれば、突入組に混ぜてほしい、そして一つで良いから異物を貰いたい」
ノエルは狙撃手としての援護しか依頼内容には無い、要するにそれだけしかしてはいけないのだ。この依頼はシーカーとしてシーカーオフィスを通した依頼ではないがそれでも勝手に持ち場を離れていいとは欠片も思っていないノエルはそれを交渉して内部の探査を複数の熟練者に囲まれることで、比較的安全に危険な異跡探査をする機会にした。ノエルは現状狙撃以外は殆ど駄目だ、一度でも熟練者の動きを見れば今後の参考にもなると考えた。
フォルテノが考えている、そこに隊長らしき男が口をはさむ
「いいんじゃないですか?精々狙撃手が一人離れても掃討後なら何とかなります。持っていく異物を一度確認するという事で」
「…まぁいいでしょう。あの機械系モンスターを総額もそれなりだったでしょうし、でも報酬の増額はその異物を見てからにしよう」
都市に住まう誰もが認める三大企業の一つレイヴン財団に謝罪させるという大偉業を終わらせたノエルは、相変わらず顔を仮面で隠したまま詳しい作戦内容の説明を受け始めた。
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