第14話:断る事の出来ない依頼
フラッグシップでノエルが新しい強化服を着ている。今回の強化服は以前の強化服と殆どデザインは変わらないこの強化服を前回と同じように体を軽く動かし仮面との同期も済ませて居る。
「どうかな?SS2身体強化服は。単純に完全上位互換の製品なんだけど」
「どう…と言われても、ね」
「派手に動かれて店を壊されても困るんだけどね」
「それもそうね」
強化服以外も情報収集機器も追加で購入して同期も済ませている、他にもTSSR対物ライフルの改造パーツに高い専用弾も購入して技量はともかく装備はほぼ一新したノエルは、その少ないシーカーランクでは不相応なレベルな物だろう。
「いや、でもTSSR対物ライフルがこんない軽く持てるなら十分よ」
「じゃあ高額商品を購入してくれたノエルさんにおまけをあげるよ」
「いいの?」
「まぁうちの価格帯はそろそろノエルさんには限界だからね。早めの選別だよ」
そう言ってグリスが持ってきたのは四角形の少々特徴的な形のスコープだった
「超高倍率情報収集機器統合式スコープ最前線でも通用するような高性能なスコープ、可変倍率も弾道予測システムも優秀なスコープだよ。とは言ってもスコープならそこまでの値段にはならないから気にせず受け取ってほしい」
「ありがとう、使わせてもらうわ」
受け取ったノエルは早速TSSR対物ライフルに取り付けて仮面や情報収集機器を始めとしたデバイスと同期した
その後もノエルとグリスが世間話をしている時に一件の通知が来た、通知の内容は仕事の依頼だったのですぐに確認した所企業からの依頼だった、ノエルが訝しみながら依頼内容を確認し真剣な顔でグリスに聞いた
「グリスさん、TSSR対物ライフルの専用弾と徹甲榴弾を追加でありったけ売ってくれない?代金は気にしなくていいから」
それを聞いたグリスはそのノエルの真剣な表情と発言の内容で何かあったと察した
「やたら物騒な依頼でも来たの?」
「詳しい内容は風潮する物ではないので言いませんがそういう事、相手が相手だから断れない依頼だわ。ならもう弾薬費をかけて全力で仕事するしかない」
「とりあえずありったけを用意したけど…大丈夫?その支払先払える?」
「それは大丈夫だと思うわ」
ノエルに依頼したのはレイブン財団だった。レイブン財団というのは三大企業の一つで知識に疎いノエルでも知っている程だ、都市の運営にも一部関わっているが何より異物関係に関わりが深い企業だ。
結局ノエルは専用弾や徹甲榴弾以外にも買えるだけの物を買いこんで装備しその全ての注文は通った事に少々残念に思いながら依頼の準備を始めた。
「ふむ、受けたか」
高層ビルの一室。レイブン財団の第三都市マガツ本社の広域作戦部の一室で一人の女が情報端末を眺めながら呟いた、その情報端末にはノエルの便利屋への依頼が載っていた、その女は心底深いため息を一つついてから目の前の五人の部隊員に目を向けた。
神妙な顔の5名の部隊員は目の前の女性の呟いた言葉を聞き取れず疑問を浮かべている。
「君たちが援護を受けたと思われ、そして誤射した人物の特定は終了した。シーカーランクはその当時12で今はシーカーとしては活動していないらしい、まぁ心当たりくらいはあるでしょう?副業始めてもおかしくは無い。今度のテンリ旧陸軍基地異跡大規模攻略作戦に参加を依頼という形で行いました、その時にこちらから謝罪することになるでしょうね。いくら向こうが反撃したとしても相手方の装備は貧弱もいいところで君達の装備は最新鋭それを考えればその程度の反撃はないも同然の事でしょう。相手側からの要求は可能な限り君達が叶えなさい、謝礼金くらいは覚悟しなさい」
一通り話し終えた女はもう一度深いため息を吐き部隊員を帰らせた、そのすぐに後とある相手に通話をかけた。
「もしもしフレア?今度の作戦なんだけど」
現代のインターネットは複数の検索エンジンがそれぞれの精度の情報を無料、有料問わずごちゃ混ぜに大量の情報が渦巻いている。その情報は有料の物でも値段が高いものほど情報としての精度が高い事が当たり前のようになっているが、勿論信憑性の全くない情報が高額で売られていることもあるので注意しなければならない、ノエルはそんな情報群を色々調べるのが好きで訓練や異物捜索をしていない間はひたすらそう言った情報を眺めては使えそうな情報の取捨選択を行っている、だが今日は異跡の情報を情報の信憑性を吟味しながらしっかりと悩み、眺めるだけの普段とは違って値段も考えているが購入している。今回の異跡はそれ程のものなのだ。
とは言え情報の膨大さや検索難易度も検索エンジンで様々で普段のただ何でも情報を得るときとは違って特定の情報を得るというのは途端に難しくなる。例えるならば、まるで大雑把に分けられられた本の山から目的の情報が記された分厚い本を探しだしそれが本当の情報かも見抜けなければいけない。
異跡の情報の精査が終わり明日からの依頼の再確認をノエルが始める。ノエルに依頼されたのは簡単に言えばASの援護だ、突撃し前衛を務めるスカーレットローズと言う機体の援護をしろという物だ。
ノエルの装備は碌に機械系モンスターに通用する銃は一つしかないTSSR対物ライフルの徹甲榴弾、徹甲榴弾そして徹甲榴弾よりも強力な専用弾だ、その他の銃弾で遠距離から攻撃して大したダメージを与える事は出来ない、そもそも連射してその弾丸を全て命中させられる技量をノエルは持ち合わせていないのだ。
ノエルは確かに長距離狙撃の技量は上がっている、だがそれ以外は欠落したままなのである、中、近距離でBBA突撃銃やTTS短機関銃やTTA突撃銃を使ったシーカーらしい戦闘は精々他の同ランクシーカーとどっこいどっこいだ。ノエルはそれを自覚している、ノエルはシーカーでは無く便利屋として狙撃手として雇われた事によって狙撃手として認められたと同時にシーカーとしての技量の低さに嘆いた。
そしてこの狙撃の技量を知っているものは少ない、ウルフフラッグかあの黒い部隊員だけだろうという事からも今回の依頼は乗り気ではなかった。だが三大企業からの直々の指名依頼をただの一企業がそれも会社を立てて数日の企業に拒否権などなかった。ノエルには精々他人の金で自分の技量の低さを補うしかなかった。
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