第8話:有象無象卒業

 異物には様々な種類がある、電子機器を始めとして大型の家電と思われるものや衣服、勿論それ以外の様々な異界からの物体が異物だ。だが旧世界のロストテクノロジーも含めて異物なのだ。異跡は異界の異跡とは限らず旧世界のロストテクノロジーの異跡などと異界の建物これは似ているものも多く判断がつかない場合も多い。その為すべてひっくるめて異跡と呼ばれている、現代とは異なるという意味では間違ってはいない。

 ノエルはその旧世界か異界からの異物か分からない異物の一つを眺めている。盗賊達が持っていた物の一つだが他のものとは違いほんの一部は売らずに残していたのだ。


「やはりいいものだな。現代の情報集機器を始めとした機器と連携もできるしこれそのものが一種の情報収集機器でもあるな」


 ノエルが見ているのは仮面型の異物だ。性能はかなり良いもののようであの盗賊達を倒した報酬の代わりとしては十分な物だろう。

 早速装備して今まで一々情報端末を確認していたがその必要もなくなりかなり纏まった金が入ったのでグリスに連絡を取って早速強化服を注文した。そのせいもあってノエルの機嫌はこれ以上ないほど高い


 ノエルがフラグシップに装備の更新のために来ている。フラグシップにはかなりの武器や弾薬があるがそれはフラグシップが三大企業の傘下の企業であるからだ。そのおかげである程度安定した速度の輸送や充実した品揃え等を実現している。


 グリスがノエルに気づき笑顔で接客を始める。ある程度顔を合わせている為友人とは言わないが顔見知り程度には仲は良い。

「来たね。裏に来て、装備があるから。にしてもカッコイイ仮面だね、拾い物?」


「あぁ、盗賊達が持っていたものだ。ちょっと撃退した時にな」


「え!?大丈夫だったの?」


「返り討ちにしたさ」


「へぇー…でも無理は禁物だよ」


 雑談を交えながらノエルがグリスに案内されついていく。グリスに案内された店の奥には一着の強化服と一丁の突撃銃が置いてあった。グリスが強化服をノエルに渡し説明を始めた


「SS身体強化服。性能的にはかなり型落ちだけどシステムはちゃんとしたのだから初めての身体強化服なら丁度いいと思う。型落ちと言っても十分な性能はあるからね」


 渡された強化服はゴムのような質感で、ある程度着やすい構造になっている。簡易更衣室で着替え、着用するが起動の仕方が分からず少々ぶかぶかしている。


「一応着れたみたいだね。起動は首元にある金属のに触れたらつくよ。その強化服は情報端末何かとも連動出来るから後でしておくといいよ。基本的には通常の戦闘モードと生活補助モードがあって戦闘じゃないなら生活補助モードにする事をおすすめするよ無駄にバッテリー消費するからね。強化服には神経伝達読み取り式と動作に追従するのがあるんだけどそれは設定で後で設定しておいて。大抵は反応速度の違いで読み取り式だけど」


 グリスに手伝ってもらい軽いセットアップを行う。この強化服はあまりボディーラインが出ずかなりデザイン性では無難と言うか特徴がない黒い強化服だ、オプションの簡易防護コートをフードまで被った姿は一見不審者のようにも見える。

 ノエルが強化服の使用感や肌への密着感で何とも言えない表情をしている、それでもある程度軽い体操をするように強化服の使用感を確認する。


「うん、良い感じだ」


「それは良かった、それじゃあ次に行こう」


 グリスが一丁の突撃銃を見せる、ハンドガードのあるベクターをアサルトライフルにしたような突撃銃だ。


「TTA突撃銃メーカー販売名タボール。軽量なアサルトライフルだが改造パーツによって専用弾が発射可能なもの。強化服を使用しているなら命中力はともかく通常弾なら片手でも扱えるはずだ。改造は既に行われている物に通常弾と専用弾のセット」


 早速ノエルが持って重さや重心の位置などを確かめる。銃をここで撃つ訳にも行かないので最低限の確認程度だ。


「軽いと言っても限度はあるか」


「そりゃあ軽すぎてもね」


 装備の確認を終えたノエルが全ての会計を終わらせてそのままの足で荒野に向かう。装備の使用テストのためだ。


 ノエルが店を去った後グリスはノエルについて考えていた。


(シーカーを初めてこんなにすぐに強化服を手に入れるとはね…言葉も結構喋れるようになってきてるけどもう少し女性らしい喋り方するものじゃないかなぁ?まぁ結構売り上げに貢献してくれてるから文句は無いんだけど)


 シーカーとして依頼でも出して腕前を確認しよう。とグリスはそう考えながら明日の資材輸送の為の銃等を箱詰めしていく。




 ノエルがジンジャーティーを飲みながら今後の予定を考えている。ノエルは先日の異物売却の際にシーカーランクが10に到達した。シーカーとしてはようやく入り口に到達したわけだ。そこでシーカーランク10のシーカーがしている依頼を調べてみると主に都市の周囲を周回してモンスターの駆除が新人シーカー向けで後は地道な異物売却らしい。


(強化服や新しい銃を買ったとはいえ今まで大分リスキーだったからな。此処は安全そうな都市周囲の巡回依頼にしよう)


 巡回依頼は当日受ける必要があるのでノエルは今日は早めに寝て明日に備えることにした。

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