第2話:武器調達

 第三都市マガツ下位区画の一角にシーカー用品量販店フラッグシップはある。

 フラッグシップは提携店が多くこの店舗は初心者シーカー向けの装備が豊富な店だ中級のシーカーまでなら取り扱っていて店もそれなりに大きく品揃えも悪くない。


 店内にて品出ししている青年の耳に来店を告げるベルが鳴る


「いらっしゃい」


 その青年の目の前には物珍しそうに店内を眺めるノエルがいた。その様子を見て恐らく新人のシーカーだろうと判断したその青年グリスは作業していた手を止めカウンターに戻りその少女を眺めていた。


(見た感じ壁内かそれに近しいくらい稼いでる家の人かな?でも服とかはそんな感じしないけど)


 一通り見回った少女がカウンターのグリスの元まで来た。


「何か初心者向けの銃は無い?」


「分かった、じゃあ予算とかはある?後はこんな銃が欲しいとか」


 営業スマイルを顔に貼り付けながらテンプレートの様なセリフを言うとノエルは少し考えた末に口を開いた

「予算は色々含めて弾代を抜いて100万くらい、癖がなくて信頼性が高いのを」


(いたって普通な回答が返ってきたなぁ、それに100万ルクルムとはこんな女の子がポンと出せる金額かな?とりあえず幾つか勧めてみよう)


「そうですね、ではBBA突撃銃はどうですか?旧世代の量産品ですが安定性・安全性が売りでそれでいて旧世代のため安い、改造パーツもいくつかありますからある程度モンスター相手には通用しますね」


 新品のBBA突撃銃をカウンターの上に出し説明をしていく、それをノエルは興味深々と聞いていた


「新品なら30万ルクルムって所かな、もっと性能が良いのも勿論あるけど少々高くなるし癖も出てくるから初心者にお勧めするならこれが一番」


「分かった、買う」


「毎度あり、他にサブウエポンや弾薬とメンテナンスキットは買う?」


「うん」


「じゃあまず弾薬とメンテナンスキットを覗いたとしてGGH自動拳銃ぐらいかな通常弾は勿論反動吸収性能が高いから君でも扱えると思う」


 大型のハンドガンを同じ様にカウンターの上に置きBBA突撃銃を含めたメンテナンスの方法やリロード方法等を実演できるものは実演していく、他に客が居ないと言うのも大きいがこう言った銃を触ったことがない者達に最低限の知識を教えるのも客が事故死で死ぬのを防ぐ為でもある。


「じゃあ全部合わせていくら?」


 ノエル一通りのプチ銃講座が終わったあたりでグリスに聴いた、お互い暇ではないのだ脱線する前にノエルは切り上げた


「諸々含めて…丁度100万ルクルムだね」


「分かった、これで良い?」


 ノエルが置いたのは現金の束だ、100万ルクルム分をカウンターの上に置いたわけだが1万ルクルム紙幣を100枚である。ノエルはいたって普通の様に強いて言えばちゃんと足りているかどうか不安そうなくらいだ。現金で大金を持つ物は先ず居ない、何故なら下位区画の多少治安の良い区画とは言えそんな大金を持っていれば盗まれるのだ。


「構わないけど現金よりシーカー証や携帯端末での支払いをおすすめするよ?武器なんかは金額が大きくなるしね」


「今日シーカーなったから良く知らなかった、わかったそうする」


(やっぱりそうだったのか、何か事情ありかな?)


「何はともあれこれからもうちの店をご贔屓に、僕の名前はグリスよろしく」


「私はノエルよろしく」


「盗まれる前にそこにある汎用総合端末があるから現金をシーカー証に紐づけした電子マネーにする事をお勧めするよ?」


 グリスが店の端にある端末を指さす、1m程の大きさの機械で空中に幾つかの情報が3画面に映っている。ノエルが正面に立つとノエルの目に映るのは別の映像が見える、ノエルが案内に従って鞄の半分を占めていた札束を全て電子マネーにした


「汎用総合端末は幾つかの店とか都市運営の施設にはあるからそこで電子マネーから現金化とか今みたいに電子化も出来るよ」


「分かった、ありがとう」



 下位区画スラム街近くの一軒家大きくは無い一戸建がノエルの家だ、とは言え彼女にとっては初めて見る訳だが。

 鍵で中を開け家の中に入ると質素な内装に必要最低限の家具しかない家だった


(思ったより質素、でも一人暮らしには広いかも)


 一先ず購入した荷物を食料は冷蔵庫に置き武器等は空き部屋に置く。昼食に軽食を取りながら武器を準備する、手に入ってすぐにその銃が使えるとは思っていない、使い方こそ知っているが素人も同然なのだ。

 帰宅途中で購入した汎用通信端末と簡易的な無料配布の周辺データを見ながら装備を整えついでにフラグシップでおまけとして貰ったリュックを背負う。銃の試し撃ちのついでに気休め程度に異物を収集してくることにしたのだ、何時までも無収入でいるわけにもいかないシーカーとしては自分が未熟者どころか私はシーカーだと他のシーカーに言えば鼻で笑われてしまうだろう。


「よし、こんなものか?」


 ノエルは少しの胸の高鳴りを感じながら家を出た。

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