第3話:戦闘訓練と異物探索

 この都市は防壁が二重に存在する。外側が第一防壁と言い。中位区画と下位区画を分けている。その防壁の内側の中位区画の一角都市機構維持局のビルの一室にて先ほどノエルと話していたオオタと言う局員とその部下の男が居る。事後処理報告書を作成する為と言うのと上司への報告のためだ。


「今日は面白いものを見たな」


「確かに、あの者は興味深いですがそれほどですか?」


「記憶を失うのは別におかしい事じゃない、うちの隊員でも過去に軽い記憶障害になった者は居るしな。だが全ての記憶を失ってその一時間後にはつたないとはいえ会話つまり言語を覚えた?冗談じゃない。報告を聞いた時はそれこそ頭大丈夫かと思ったね」


「あり得るのでしょうか?」


 そう部下の男がオオタに聞くとオオタは難しい顔を浮かべながら考えた


「あのノエルって子がただ言語能力以外を失っただけってなら別におかしくはない、だが0からあのレベルまで1時間話し声だけで学習したって言うなら」


「言うなら?」


「化け物かもな?それで賞金首モンスターの死体はどうだったんだ?天使系の生き残りってのは聞いたがO.D.Oの回収は?」


「それが…」







 荒野 そこは素人が何の警戒も無くうろつけば物の数分で骨すら残らず消え去る場所だ。とはいえ都市の付近はそう危険というわけではない。

 ある程度安全な場所、まさにそう例えるが妥当な場所にノエルはいた、銃の扱い方を練習するためだ。彼女は別に訓練を受けたわけではない、最低限の知識をフラグシップで聞いただけだ。


「ちょっと重い…」


 いくら何でも十代半ばの少女が何の苦も無く4キロ前後の重さのライフルを持てるわけがない。それでもやるしかない、シーカーとして稼いで行くと決めたわけではないが少なくともこの身一つで稼いでいける職業はこれしかないのだ。

 銃の口径は最低でもある程度のモンスターに効く威力の通常弾を要求される。その反動に耐えれるようにしっかり構え発砲し少しでも反動を吸収しめい命中精度を上げれるように体の動きを意識していく。


(難しい、やはり見様見真似では限界があるし何より生身では限界がある)


 銃を手に入れて直ぐに精密射撃ができるか?と問われればほぼ不可能だ。天性の才能があれば可能かもしれないが普通一般人が一日二日で初撃はまだしも連続でリコイルコントロールを体現するのは限界がある。

 ノエルの理解力はスポンジのようなものだ、以前の知識が水で今はまた吸収中といったところだろう。彼女は死にかけ脳のクロックが少々上げやすくなっている、簡単に言えば周囲がスローに見えるものだが別に特別なものではない。少々訓練こそ必要だがある程度のシーカーランクなら誰でも身に着ける必要のある基礎能力と言える。とは言えノエルの命中精度上昇には大いに役立った。BBA突撃銃は旧世代の銃だが今でも使用者が多いベストセラーの銃だ。

 何より命中精度・耐久年数に過酷な環境である荒野でも問題なく作動するなどその他総合的に性能が十分高く拡張性が高い名銃それでいてお手軽に購入でき最高のコスパで有名だ。



 2時間が経過し当初予定していた分の練習分の弾薬を使い切り銃撃の訓練を終え装備を片付ける。片付けているとふと折角荒野に出て何も得ずに帰るのはどうなのだろう?ノエルは思った


(そう言えばこの辺にも異物があるのかもしれないんだ)


 そう思いノエルは異物捜索を開始する。流石にこの周辺は都市から近いこともあり大していいものは無いとは思うが折角来たのだ。少し捜索していこうと周辺を警戒しながら捜索する。


 とは言えここは戦闘等で殆ど更地と化しているので少々歩く事にした。

 数キロ歩いたところで建物を見つけた。殆ど崩れかけ、もはや何の建物だったかも分からない異跡がある。瓦礫を少々片付ければ何か手に入るかもしれない。


 瓦礫をどかしながらその遺跡の中を探索する。

 機械系のモンスターの残骸が風化して転がっているのを除き大したものはなさそうだった。流石にここまで来て何も得られず帰るのも嫌だったためもう少し捜索する事にしたがもう少しで日が暮れる、せめて日が暮れる前には都市には帰りたいと考えたノエルは捜索スピードを早める。


 一番奥の最後に入った部屋でロックのかかっていた大型容器を見つけた。


「これは…銃?」


 ガラスと思われる容器の中に入っていたのは少々変わった銃のように見えるものだ。黒い金属で出来ておりかなり薄型の拳銃だ、とても銃弾を発射できるとは思えない。

 ロックを解除しようにもパスワードなんか分からない。幸いガラス容器の方は破損している、つまり経年劣化しているようだ。警報装置の心配はあったが破損している部分にGGH自動拳銃の銃撃を複数打ち込む事で強化ガラスを破壊し中の銃を引き抜いたその瞬間。


『マス『警告!警告!重要武装の窃盗』完了しました』


 激しい警報と何かの音を聞いた、とは言え動くはずの警備ロボは沈黙したままだ。一息つきつつ異物の拳銃を見る、先ほどとは違い一部分で鈍く緑の発光があり現代兵器とは明らかに違うデザイン。


(滅茶苦茶高そうな異物だが武器として十分使えそうだ売らずに持っておくか。後何か書かれてる…Xium…エクシウム?)


 異物の銃エクシウムを眺めていると少し薄暗くなっているのに気づきすぐに帰還の準備を開始する


(初めての異物捜索にしてはうまくいった?とは言え探査機なんかは全く無い。この状態で都市まで戻れるか?いや戻るしかないんだが)


 装備の不自由さを感じながらもノエルは荒野を極力静かにそれでいて早く移動する。彼女はただそこら辺の一般人が多少武装しただけに過ぎないのだ、こんな少女とモンスターが鉢合せたらどうなるかなど想像に難くない。

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