第33話 一夜明けて

 -美優-

 健太君を泊めた翌日。

 いつもより少し遅く目が覚めた。

「もう11時か。とりあえず起きなきゃ。・・・お互い久し振りだったから疲れたかな?健太君はもう暫く寝かせとこう」

 そう思いながら下に降りて行くと、


「あっ丁度起きてきた。健太君は?」

 お母さんがキッチンで料理していた。


「まだ寝てる。えっ、ひょっとしてご飯作ってくれてるの?」

 私はテーブルに並べられた料理を見て驚いた。


「私はもう仕事行かなきゃいけないから、健太君起きたら2人で食べなさい」


「ありがとう。いつもより豪華じゃない?」

 私が少しニヤつきながら言うと、


「そりゃ娘の大事な彼氏が来てるんだからちょっとは頑張らないと。あとあんた今意地悪そうな笑顔だったよ」

 そう言ってお母さんも意地悪そうな笑顔を浮かべる。


 私が顔を洗って、歯磨きしてると、


「じゃあお母さん本当に行くから後で温めて2人で食べてね」

 そう言ってバタバタと出て行った。


 とりあえずお母さんに健太君は気に入られたっぽいから良かった。

 そう思い部屋へ戻っていく。


 部屋に戻りスマホを確認すると朱美からLINEが来ていた。

『昨日はあれからどうだった?

 ひょっとして2人で燃え上がった?

 霊の対策は何か良い案見つかった?

 また色々教えてね』


『何処かにカメラとか盗聴器付いてないよね?』

 一瞬考えてしまった。


 しかし朱美からのLINEを見てやはり痛感する。

 女の霊に対する対策は何一つ進歩してないんだ。


 いや少しだけわかった事はあるか。

 健太君の家がやばいという事だ。

「とりあえずもう少ししたら神主さんに紹介してもらった人に連絡してみよう」

 そう思いながら健太君の方を見つめる。


『昨日は色々あったけど最終的には良かったな。してる最中は「美優」って呼んでくれてたけど起きたら美優ちゃんに戻ってるのかな?』

 そんな事を考えながら朱美にLINEを返す。


『実はあれから右往左往して健太君が最終的に泊まりました』

 なんてバレたら絶対突っ込んだ事聞かれるし、さてどうしたものか?


 -健太-

 誰かの喋り声で目を覚ます。

「う~ん。今何時?」

 ノビをしながら起き上がると美優ちゃんが目を見開きこっちを見ている。


 美優ちゃんが持ってるスマホから声が漏れてる。

「えっ美優誰かいるの?ねぇってば」


 どうやら朱美ちゃんと喋ってたようだが美優ちゃんのリアクションを見る限り、あまり良くないタイミングで声をかけてしまったようだ。


「えっいや、違うの。ちょっと聞いてってば」

 美優ちゃんは笑いながら喋っているが焦っているのが見ていてわかる。


 そんな対応を見ていて、いたたまれない気持ちになり再びベットに潜る。


 美優ちゃんは少し諦めたように昨日俺の家に行った所から今に至る経緯を説明しだした。


「うん。だから別にいやらしい思いとかがあって泊めたりした訳じゃないからね。とりあえずまた後で連絡する」

 そう言って電話を切り美優ちゃんがこっちに来る。


「おはよう。起きた?あんなタイミングで声かけるから朱美に健太君泊めたのバレちゃったよ」

 そう言って眉を八の字に下げながら困ったように笑ってた。


「ごめん。寝起きで状況が全然理解できてなかった」


「まぁ別にいいんだけど絶対からかわれるよ。だって朱美楽しそうに笑ってたもん」

 そう言って笑いながら頭を抱えていた。


「そうそう、お母さんがご飯用意してくれてるから一緒に食べよう」


「えっマジで?いたれりくせりやん。ありがとう」

 そう言って2人で下に降りて行く。


 ダイニングで美優ちゃんのお母さんが用意してくれた食事を有り難くいただき今後の予定を考える。


「ご馳走様でした。美味しかった。本当にお母さんにお礼を言わなきゃ」


「ふふふ、お母さんも健太君がいるから張り切って用意したみたいだったよ」


「そうなんだ。有り難いなぁ。それでこれからどうしようか」


「とりあえずこの後、紹介してもらった人に連絡して相談しようかと思ってる」


「そっかぁ。・・・あのこんな時に申し訳ないんだけど、その、タバコ1本吸ってきていい?」


「あっ、そっか。ずっと我慢してたんだ。そこの換気扇の下で吸っていいよ」


「えっ家で吸っていいの?」


「うん。お父さんもお母さんもそうしてるし。はい、これ使って」


 そう言って美優ちゃんは灰皿を出してくれた。


「とりあえず私は連絡しとくから一服したらまた部屋に上がってきてね」

 そう言って美優ちゃんは上がって行った。


 人の家に来てまずお風呂に入り、泊まらせてもらって、ご飯もいただき、今キッチンでタバコを吸っている。

 俺は一体何をしてるんだ?何様なんだ?

 軽く自己嫌悪に陥る。


『それはそうと美優ちゃん。真面目な子かと思ってたけど案外かな。あと気も強いな』

 そんな事を考えながら部屋に戻って行く。


 -美優-

 とりあえず部屋に戻りメモに書いてあった連絡先に電話してみる。


「あのすいません。佐宗と申します。九州の五条さんから紹介していただきまして」

 そこまで言うと先方さんはわかったみたいで


「ああ、聞いてますよ。やはり其方そちらでは対処しかねましたか」


「はい。実は・・・」

 そう言って健太君の家での事を伝えた。


「なるほど。その方を家から出して匿ったのは賢明だったかもしれませんね。明日、其方に伺います。駅まで迎えに来ていただいてもよろしいですか?」


「えっ明日来ていただけるんですか?」


「はい。急いだ方がよろしいでしょうし、どうでしょう、明日13時に駅に迎えに来ていただきたいんですが」


「わかりました。では明日13時に駅にお迎えに伺います」


 そう言って電話を切り健太君に内容を伝える。


「なんかごめん。色々してもらって。俺、面倒ばっかりかけてるね」

 そう言ってうつむく健太君に


「別に健太君の為にしてるけど全然苦にならないし、面倒だとは思ってないよ。だから気にしないで」

 そう言って寄り添い手を握る。

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